Asset Watch 年金基金とベンチャー投資 ~新たなリターンの可能性~ 第3回 海外の機関投資家マネーが流入するレイトステージ
米国におけるVC(ベンチャーキャピタル)への資金供給は、年金基金をはじめとする機関投資家が占める比率が8割にも上る一方で、国内VCの場合は年金基金による資金提供は1%未満にとどまる。ここ数年、国内への投資に特化したPE(プライベート・エクイティ)・VCファンドの運用資産残高が急速に増加し、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など国内の機関投資家も注目し始めている。日本のユニコーン企業の大型上場に携わった経験を持つMinerva Growth Partners マネージング・パートナーの長澤啓氏と村島健介氏に、日本のスタートアップの資金調達環境の変化などを聞いた。
未上場のまま資金調達を重ねて中長期で大きな成長を目指すスタートアップ
VCファンドは成長段階別に、「シード・アーリー」ステージと呼ばれる初期段階のスタートアップに投資を行うものと、プロダクトや組織がある程度確立して事業の拡大を目指す「ミドル・レイト」ステージを支えるグロース投資に分けられる。
Minerva Growth Partners マネージング・パートナーの長澤啓氏は、「レイトステージはビジネスモデルや収益構造が確立し、リスク・リターンの観点から比較的金融商品として説明が付けやすいため、VCの中でも機関投資家が参入しやすい。これまで日本のスタートアップはレイトステージに入ると東証マザーズ上場を1つのゴールに設定していたが、小さく上場してしまうと十分な株式流動性が担保されないことから大口機関投資家が購入し難いため、その後時価総額を伸ばしていくのは至難の業だ。また、上場後も先行投資による赤字を適正に評価されずに株価が低迷し、企業が『攻めの成長戦略』に振り切れないケースが少なくない。こうした状況から、未上場のまま資金調達を重ねて中長期でより大きな成長を目指す動きが活発化している」と語る。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。