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マクロ経済 本当に怖いのはデフレではなくインフレ
インフレが大統領選勝利の要因に
1980年の米国大統領選挙は、現職で民主党のジミー・カーター大統領と俳優出身で共和党のロナルド・レーガン元カリフォルニア州知事の対決となったが、今でも強く印象に残っているのは、レーガン陣営が頻繁に流していた選挙用コマーシャルである。そのコマーシャルで、レーガン候補は食パン一斤を手に持ち、カーター政権がスタートした時と現在の食パンの価格を比較し、いかにインフレが酷かったかを強調。その上で、インフレを鎮静化させることを最優先の公約の一つとして打ち出したのである。
大統領選挙の結果はレーガン候補の地滑り的大勝利であった。イランの人質救出作戦の失敗等、外交安全保障上の要因等はあったにせよ、当初の俳優出身の大統領はあり得ないという風潮を覆し、レーガノミクスや東西冷戦の終焉への道筋をつけた名大統領を生むことになった背景には、カーター政権におけるインフレ放置があったことは紛れもない事実である。
日本でも、1970年代の狂乱物価の時代において、インフレは当時の歴代政権にとって最も悩ましい問題であった。総理大臣の記者会見や国会での代表質問、衆参の予算委員会での総括質疑でも最初の質問はいつも高騰を続ける物価に関するものであった。
「物価の安定が至上命題であり、理想はゼロインフレである」という総理大臣の発言をよく耳にしたものである。この当時は夢物語であったゼロインフレが現在、実現されているわけだ。事実、現在のほぼゼロインフレの状態というのは、極めて心地良い状態であると言えるだろう。
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