【スペシャル座談会】機関投資家運用の新潮流 金融工学の発展で広がる選択肢。運用会社のスタンスは二極化
終わりの見えない低金利環境が続いている。マイナス金利政策という逆風が吹き荒れるなか、機関投資家はどのような運用戦略を模索しているのか。運用のプロフェッショナルたちの議論と見通しからヒントを探る。(工藤晋也)
信頼が崩れたマーケット・ポートフォリオ
2016年はどんな1年だったか。
田口 2月の日銀のマイナス金利政策導入や6月のBrexit(英国のEU離脱)、11月の米国大統領選挙など、波乱に富んだ1年だった。しかし、当基金では市場は予測外に動くことを前提にし、下落局面でも大きな損失を出さないよう安定した運用スタンスを維持している。
吉田 2016年は本当にいろいろなサプライズが起きた。とくに運用関係者に大きなインパクトを与えたのは、マイナス金利政策だろう。NOMURABPI総合指数の利回りが一時マイナスに沈んだことで、国内債券のパッシブ運用を見直す動きが加速した。
年金基金などと比べて短期運用の銀行は、すでにマイナス利回りの日本国債に代わる投資対象に資金を振り向けつつある。長期運用の年金基金や生命保険会社も、国内債券の代替投資先としてPE(プライベート・エクイティ)などのオルタナティブ資産に関心を寄せている。
鈴木 2016年は2つの変化があった。1つは、マーケット・ポートフォリオの信頼が失われたこと。これまではマーケットにあるすべての銘柄を、その時価構成比率に合わせて保有することが最も効率的な手法と言われてきたが、マイナス金利政策で債券にはその手法が当てはまらなくなった。株式では、現時点で債券ほど顕在化はしていないが、マーケット・ポートフォリオの効率性に疑問を持つ投資家も増えている。
もう1つは、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSRI(社会的責任投資)といった手法に日本の機関投資家が興味を示すようになったこと。マーケット・ポートフォリオへの疑念が、ESGやSRIなどに目を向ける要因となった。
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