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マイナス金利を乗り越える年金運用 第8回 投資家と発行体の両者がWin-Winの関係に ~何のためにESG投資を意識するのか~ESG対応のポートフォリオを構築するには
収益の最大化のみが適切な投資行動ではない
年金運用の主な目的は、市場インデックスを用いて設定したベンチマークに対する超過収益を狙うことではない。よく手段と目的とを混同した意見を耳にするが、あくまでも、当該制度で前提とする運用利回りを中長期的に安定して稼ぐことである。アセットオーナーは、加入者から委託された給付を実現するために、運用会社などのアセットマネジャーに具体的な運用を委託し、アセットマネジャーは指示に基づいて運用し収益を獲得する。この運用プロセスを通じて予定された給付等を実現することが、年金運用に携わる者の負う義務であり、その際に遵守すべきものを受託者責任(フィデューシャリーデューティー)と呼ぶ。
欧米でESG投資が受託者責任の一部を構成すると考えられていることや、ESGと併存する形で国連の提唱するSDGs(Sustainable DevelopmentGoals;持続可能な開発目標)概念が注目されていることも、年金運用の目指すものが収益獲得だけでないことを示している。ESGを意識する企業は長期に存続する可能性が高く、ESG投資を実践する投資家にとっては中長期の投資成果に結び付くことが期待される。日本の年金が資金特性から長期投資であると言われながら、ベンチマークに対する短期的な勝ち負けを意識して実質的に短期の投資家になっている悪弊から逃れるためにも、ESG投資は重要かつ必要な考え方である。
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