ESG(環境・社会・企業統治)投資への注目度が日増しに高まるなか、本誌は2021年3月18日に「~本当に長期的リターンに資するのか?~ 再考ESG投資」と題したオンラインのカンファレンスを実施した(主催:J-MONEY、協賛:メッツラー・アセット・マネジメント、富国生命投資顧問)。各スピーカーの講演から、ESG投資の可能性を紹介する。

特別講演:ESG投資とパフォーマンス

好成績の要因分析は研究途上

全企業が投資対象で長期リターンの改善を期待

湯山 智教氏
前・東京大学特任教授(現・金融庁)
湯山 智教氏

ESGと、CSR(企業の社会的責任)およびSRI(社会的責任投資)は近年、その相違が指摘されている。SRI は軍需・たばこ・ギャンブル、人種差別などに関連する特定企業を投資先から除くなどの倫理的な側面が重視された。一方、ESGは、長期的に見たリターンの改善効果を期待するといったより収益性の要件も強い概念と考えられる。

ESG投資がポジティブなリターンをもたらすとの考え方では、「銘柄スクリーニングで、結果的に高いマネジメント能力をもつ会社が残り、高い投資パフォーマンスにつながる」「ESGを考慮した企業は、環境や社会関連のリスクも低減し、ガバナンス向上の点からもリスクが低下するため、資本コスト(リスクプレミアム)が低下する」などを主張する。

後者については、一般的な株価理論価格算定に用いられる将来キャッシュフローを割引率(資本コスト)で割り引いて企業価値を評価するDCF法で評価する際の割引率も低下することから、企業価値が向上し、よってリターンも向上するとのロジックだ。

反対に、リターンはネガティブまたは無相関との意見では、「スクリーニングで投資対象に制約が加わる(ダイベストメント)ので現代ポートフォリオ理論の観点から十分に分散投資ができない」「スクリーニング・コストがかかるのでパフォーマンスを押し下げる」などを論拠とする。

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