徳島 勝幸
ニッセイ基礎研究所
金融研究部研究理事 年金総合リサーチセンター長
徳島 勝幸(とくしま・かつゆき)
1986年京都大学法学部卒。1991年ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA。資産運用関係の業務に25年以上にわたって従事し、債券投資、資産配分、クオンツ運用、リスク管理、運用コンサルティングなど、さまざまな経験を有する。社会保障審議会資金運用部会委員を務めるほか、証券アナリストジャーナル編集委員でもある

本稿を執筆している2021年3月初めの時点では、米国の長期金利上昇を受けて日本でも超長期年限を中心に国債利回りが上昇している。10年国債利回りはマイナス金利政策導入以降で最も高い水準を付しており、日本銀行が3月に開催する予定の金融政策決定会合において、イールドカーブコントロールによる10年国債利回りの変動幅が拡大されるのではという観測も見られる。果たして、本誌の刊行される4月の新年度を市場はどのように迎えていることだろうか。

経済の抑制・自粛の反動とワクチン接種開始への期待

これまでの金利水準の低下は、趨勢としての長期的な要因があることに加え、特に各国中央銀行による強力な金融緩和によって人為的に金利が押し下げられていたものである。経済の回復を反映し人為的な下押しが緩められるのであれば、自然体に近い水準まで金利が上昇することは決して不自然でない。そもそも、金利水準がマイナスになり長期間にわたって継続することは、経済情勢として正常な姿でないとも考えられる。

現在の金利上昇を見渡しても、先進国の国債利回りは容易に上昇しないという中長期での想定を覆すようなものではない。背景に存在しているのが、先進諸国に共通な少子高齢化による経済成長の鈍化と、経済活動の萎縮や海外交流の拡大による物価の上方硬直性が存在するからである。一方で、今回の金利上昇局面に関しては必ずしも「謎」と考えるべきものでなく、複数の短期的な要因の存在によるものと考えられる。

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