米国債の利回り上昇やこれまで堅調だった金価格の下落など、2021年に入って世界の運用環境は変化の岐路に立っている。こうした中、長期で着実なリターンの獲得を狙う年金基金はどのように運用を考えていくべきだろうか。連載「年金基金への提言」第4回では、ファイナンスを専門分野とし、年金運用に関する研究実績も持つ文教大学教授の鈴木誠氏に、経験則が通用しないコロナ禍でも適切な運用を続けるヒントについて聞いた。
「脱炭素化」は産業構造を変える
歴史について書かれた文章などでは、「紀元前」を「B.C.」(Before Christ)と表記する。では「紀元後」は「A.C.」(After Christ)かと思いきや、ラテン語を使って「A.D.=Anno Domini」とするのが一般的らしい。ただ2020年以降、「A.C.」は「アフターコロナ」として歴史家に使われる表記になるのではないかと想像が膨らむくらい、新型コロナウイルスの感染拡大は我々の生活を大きく変えてしまった。
文教大学教授で年金資産運用の研究に取り組む鈴木誠氏は、歴史的な社会変化に直面する昨今の運用環境を俯瞰(ふかん)した際、年金基金は大きく2つのポイントに注目すべきだと説明する。
まず1つ目は、コロナ禍以前からの大きな流れ。鈴木氏によれば、年金基金が特に重視しなくてはならないのが、今や投資家にもSRI(社会的投資責任)や国際連合のPRI(責任投資原則)などを通じて配慮が強く求められているESG(環境・社会・企業統治)だ。
■ESGは企業だけでなく投資家にとっても重要な要素になっている
「脱炭素化推進などで大きな産業構造の変化が起きる可能性が高い。年金基金もウエートの配分に気を付けなければ長期的なパフォーマンスに影響が及ぶことは火を見るよりも明らかだ」(鈴木氏)
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