米国の利上げがマーケットの大きな焦点になっている。金利が正常化していく過程において、バンクローンはどのように推移するのか。ニューバーガー・バーマンのバンクローン運用チームでポートフォリオ・マネージャーを務めるジョセフ・リンチ氏に話を聞いた。(取材日:2015年7月29日)

ジョセフ・リンチ氏
ニューバーガー・バーマン
バンク・ローン運用チーム
ポートフォリオ・マネージャー
ジョセフ・リンチ氏

米国の金融政策の転換がバンクローンにおよぼす影響は。

リンチ 米国経済はかなり力強さを取り戻している。当社は2015年内のどこかで、FRB(米連邦準備制度理事会)は金利引き上げに踏み切ると予想する。

バンクローンは、一般にロンドン銀行間取引金利「LIBOR」などの基準金利に一定のスプレッド(上乗せ金利)を上乗せした変動金利型の金融商品である。金利上昇に追随する特徴を踏まえると、今後も5~6%のリターンが期待できるだろう。

2012年以降、スプレッドはタイト(縮小)化しているが、バンクローンを取り巻く環境は好転している。景気回復に伴って発行体の財務状況は改善し、デフォルト率は歴史的にも低い。ファンダメンタルズ対比で見たスプレッドは、むしろ非常にワイド(拡大)になっている。

バンクローンの競合商品であるハイイールド債券にとって現在の市場環境はどうか。

リンチ スプレッドは通常、ハイイールド債券に比べてバンクローンのほうが1.4%程度低い。バンクローンはハイイールド債券より優先的に弁済を受ける権利を有しているからだ。

バンクローンの特色の一つに急激な金利上昇に対する耐性が挙げられる。一方のハイイールド債券は固定金利のため金利リスクを負うものの、スプレッドが緩衝材になる。緩やかな金利上昇が想定される足元の市場環境では、ハイイールド債券にとっても悪くない状況といえるだろう。

米国ではバンクローンのバブル防止策として「レバレッジ・レンディング・ガイダンス」の導入が進められている。

リンチ 2013年に発表された当指針は、銀行によるレバレッジ比率が高い発行体への貸出を抑制する目的で設定された。こうした当局の取り組みは、クレジット市場におけるバブルを未然に防ぎ、デフォルト率の低減などに寄与していくことから、我々のようなバンクローンの投資家にはプラスの規制と見ている。

ニューバーガー・バーマンのバンクローン戦略の優位性は。

リンチ 業界最大級の運用体制だ。バンクローンを運用する非投資適格クレジット運用チームは、30名超の経験豊富な運用プロフェッショナルで構成されている。このうちリサーチチームは総勢25名と充実した陣容を持つ。当社ではクレジット・アナリスト一人当たりのカバー範囲が30社程度となっており、発行体に対して、より精緻な分析が可能な体制になっている。

加えて財務内容の悪い企業は排除し、業界内のリーディングカンパニーを厳選していく「ハイクオリティバイアス」を通じて、ダウンサイドに強い銘柄を厳選している。