マイナス金利を乗り越える年金運用 第5回 伝統的資産に固執するだけでは古い。ロング・オンリーの手法から第一歩をオルタナティブ投資への向き合い方
債券や株式などと相関性が低い資産
一般的な年金運用における資産構成を考えると、配分の多くを占める内外債券が各国の中央銀行による強力な金融緩和の影響によって低利回りの獲得しか期待できない資産になって久しい。その一方で、株式の内包する価格変動リスクを敬遠するならば、全く異なる利回りの獲得手段を別途考える必要がある。証券投資理論の基礎に立ち返れば、相対的にリスクの高い資産への投資は相対的に高いリターンで報いられるはずである。単純にリスクが高いというのではなく、債券や株式の伝統的資産とは全く異なるリスク・リターン・プロファイルを持ち、相関が低いことを期待できるのがオルタナティブ投資である。
オルタナティブ投資とは、語義通りの “代替的”投資であって伝統的な資産クラス以外の投資すべてを指す概念である。ロングポジションを所与とする伝統的資産への投資に対し、ショートポジションを活用するといった非伝統的な投資手法を用いることもオルタナティブ投資の範疇に含められる。伝統的な投資手法とはロング・オンリー、いわゆる買い持ちである。オルタナティブ投資の代表的な手法としては、ヘッジファンド投資のほかにも、不動産投資やプライベート・エクイティ(PE)投資、インフラストラクチャー投資といった様々なものがある。実際の例を見ると、オルタナティブ投資の範疇は極めて幅広い。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、オルタナティブ投資の対象として “インフラストラクチャー、プライベート・エクイティ、不動産その他”としているが、常に“その他”を含んでいる。オルタナティブ投資の枠組みを整理してみると、図表1のようにまとめることができる。
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