2014年のベストディールを表彰する「ディール・オブ・ザ・イヤー」。金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に、9部門からベストディールを選定した。(J-MONEY編集部 ※データはディールロジック提供)
M&A部門
ベストM&Aディール(OUT-IN)
シナプティクスによるルネサスエスピードライバの買収
米電子部品メーカー、シナプティクスによるルネサスエスピードライ(RSP)の買収は、業界をけん引する企業同士のM&Aであり、その注目度や市場からの期待の高さにおいてベストディールにふさわしい案件だった。
RSPは半導体大手ルネサスエレクトロニクスの子会社でスマートフォン(スマホ)など中小型液晶パネルを駆動する半導体に強みを持つ。同分野で世界第3位のシェアを誇り、米アップルのiPhoneの液晶を動かす半導体も同社製だ。
一方、シナプティクスはノートパソコンのタッチパッドやスマホ用のタッチパネル向けの半導体で世界的なシェアを持つ。2013年には指紋センサーの企業を買収したことで、同市場でも圧倒的なシェアを確保するに至った。過去には、PC用のタッチパッドなどでアップルと取引があったが、iPhone発売以降は関係が途絶えていた。今回の買収をきっかけに関係が復活すると期待される。
液晶とタッチパネルの調整には本来、莫大なコストと時間がかかる。今回のM&Aにより、生産のコストと時間を大幅に削減するとともに、低価格化が進む今後のスマホ市場において、大きな強みを発揮すると期待を寄せる市場関係者は少なくない。
経営再建中のルネサスエレクトロニクスは、2013年からRSPを売却する方針を固めていたという。最終合意は2014年6月。RSPの工藤郁夫社長は「ルネサスとは目指す方向性が違っていた」と語り、シナプティクスとのシナジーに期待を寄せた。
シナプティクスが今回の買収のために投じる資金は485億円。発表直前の時価総額が2400億円だったことを考えると、決して安くない買い物といえる。ルネサス以外にもシャープや台湾の半導体メーカーなどが保有するRSPの全株を保有することになる。
RSPの買収発表後、市場はシナプティクスの決断を好感し、米国では翌11日に株価が3割近く上昇した。
今回のM&Aをきっかけに同社は、ディスプレイ市場のあらゆるニーズに応える製品ポートフォリオを持つことになる。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。