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マイナス金利を乗り越える年金運用 第4回 インカム収益力の低下と将来の金利反転でマイナスリターンの可能性が高まっている債券投資は死んだのか~ウィズコロナ時代への対応~
日本は金融緩和政策の“不幸な”先進国である
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金融研究部研究理事
年金総合リサーチセンター長
徳島 勝幸(とくしま・かつゆき)
1986年京都大学法学部卒。1991年ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA。資産運用関係の業務に25年以上にわたって従事し、債券投資、資産配分、クオンツ運用、リスク管理、運用コンサルティングなど、さまざまな経験を有する。社会保障審議会資金運用部会委員を務めるほか、証券アナリストジャーナル編集委員でもある
日本銀行がマイナス金利政策を採用してから、既に4年半以上が経過している。異次元の金融緩和からだと7年という長い年月が経過しており、ついに首相が交替してしまったものの政策の大きな変更はない。金融緩和によってジャブジャブとなったマネーは、株価や不動産価格の高止まりを支えるとともに、債券投資による収益獲得の機会を棄損している。代表的な国内債券市場インデックスであるNOMURABPI総合のリターンがプラスになるのは、マイナス金利の進行によるキャピタル益のためであり、裏返せば、インカム収益力の低下と将来の金利反転によってマイナスリターンになる可能性が一層高まっている。
スイス中央銀行やECB(欧州中央銀行)は日銀より早くからマイナス金利政策を導入しており、短期金利のマイナス幅も日本が決して最も深いものではない。しかし、日本が非伝統的な金融緩和政策の最先進国であると考えられるのは、中央銀行による購入対象資産が単に債券のみならず、株式(ETF)や不動産(J-REIT)といった満期のない資産にまで及んでいるためである。マイナス金利政策の効果を強化するマネー供給策としては、他の先進国が容易に真似できない“不幸な”状態なのである。
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