コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社は2020年4月17日、「Future of Work-ポスト・コロナにおけるNew Normalの加速とその意味合い」と題した記者向けビデオセッションをオンライン配信で開催した。新型コロナウイルス感染拡大により、多くの日本企業では、在宅勤務に代表される「働き方」と「将来の雇用環境」に対する関心が高まっている。ビデオセッションの概要を紹介する。

オンライン配信
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンライン配信で聴衆に語りかけるシニアパートナーの桑原氏(右)とパートナーの櫻井氏(左)

最初に登壇した同社シニアパートナーの桑原祐氏は、GDP成長を決定するのは労働力と労働生産性だが、少子化にあえぐ日本では労働力増加は見込めないと述べたうえで、「労働生産性が変化しなければ、2030年にはGDP(国内総生産)成長はほぼゼロになる。人間が行う業務の自動化が進むだろう」と指摘した。

世間では、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などによる業務自動化は人間の雇用を奪うと懸念する向きが多い。特に日本はルーティンワークが多く、世界的に見ても自動化に移行しやすい業務が多いといわれる。同社の予測では、2030年までに日本中の業務の23%、約1660万人の雇用を機械が代替するという。

一方で、技術革新など産業構造の変化が新たに1110万人分の雇用を生み、2030年時点の労働力需給を考えれば、150万人程度の労働供給不足が発生するとした。「今は存在しない職業がどんどん創出される。日本は、自動化される職種から新たな産業にいかに人材を投入するかという課題に向き合わねばならないだろう」(桑原氏)

こうした変化を見据え、短期のコロナ対応だけでなく長期的視点で行動を起こすべきだと強調したのが、セッション後半に登壇した同社パートナーの櫻井康彰氏だ。

櫻井氏は、ポスト・コロナで自動化が普通となる「New Normal」(新常態)の視座に立って政府や企業などが足元で取り組むべき課題として、「経営マネジメント層のデジタル・トレーニング」「柔軟な働き方モデルの確立」「事業ニーズとテクノロジーを繋げる『ビジネス・トランスレーター』の育成」「AIなどデジタル人材育成に向けたリスキリング(再教育)」の4つを挙げる。「産業をまたいだ人材の移動が課題となる日本にとっては、再教育プログラムの開発が最優先事項だ」(櫻井氏)

セッションの内容は、同社シンクタンクのマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)がグローバルで研究する「Future of work」(AIなど技術進化が雇用・働き方をどのように変えていくのか)の日本版要旨として同社WEBサイトに掲載された。日本経済の長期展望を考察するために、企業経営者のみならず、機関投資家も一読する価値があるといえそうだ。

マッキンゼー・アンド・カンパニー「知見」ページ
「Future of work」日本語版要旨:The future of work in Japan ―ポスト・コロナにおける「New Normal」の 加速とその意味合い―(PDF)