低金利環境を背景に、新たなリターンの源泉としてオルタナティブデータに注目が集まる。ナスダックのグローバル情報サービス部門マネージングディレクター トーマス・フランチック氏に、同データの現状や展望を聞いた。
(取材日:2020年4月15日)

トーマス・フランチック氏
ナスダック
マネージングディレクター
グローバル情報サービス責任者
トーマス・フランチック

オルタナティブデータ活用の現状は。

フランチック これまで一般には注目されてこなかった様々なデータソースに投資家の関心が集まっている。具体的には、消費者のウェブサイト閲覧やEコマースでの購入履歴、SNS(交流サイト)上の活動といった個人単位のデータから、海上貨物輸送や新車登録情報をはじめとしたマクロの経済活動を表すデータなどが挙げられる。「オルタナティブデータ」と総称されるこうしたデータセットを活用することで、投資家は投資機会の評価に当たり、他にはない判断指標を得ることができるメリットがある。

特に、市場平均よりも大きなリターンを狙う投資家にとっては、オルタナティブデータは他の投資家と差別化を図ることが可能な強力な新兵器だ。多くのバイサイド機関投資家で、投資・運用モデルの強化に取り入れる動きが活発化している。

グローバルで金融機関向けデータ提供・分析を手掛けるGreenwich Associatesが2019年に行った調査によれば、調査に回答した金融機関のうち74%はオルタナティブデータがすでに投資に大きな影響を与え始めていることを実感している。また、クオンツ運用ファンドの約30%は、自らのα値(市場平均と運用益の差)のうち、少なくとも20%が同データによってもたらされたと回答した。

ナスダックの取り組みは。

フランチック 我々の「Quandlプラットフォーム」は、様々な地域の企業からデータを探し出し、投資モデルの構築に資するデータセットを投資家に提供する。新規の自動車購入に伴う保険契約データを取得する目的で米国の大手保険会社と提携するなど、質の高いデータセットの構築に腐心している。さらに、アジア地域に関しては特別に同地域に特化したデータ商品を展開する。

活用のポイントは。

フランチック オルタナティブデータは、ただ単純にデータを「探し集める」だけでは不十分。同データの強みの発揮には、適切な解釈と分析が不可欠だ。

オルタナティブデータは、従来の金融データのように定量化の容易なデータばかりではない。SNS上の書き込みなど、数値化できない「非構造化データ」がかなりの割合を占める。さらに昨今のIT(情報技術)インフラの発展に伴い、データの産出スピードは加速する一方である。

こうしたオルタナティブデータの活用には、高度なデータマネジメントを支える分析プラットフォーム、試験ツール、流動的なデータ管理の仕組みづくり、および専門家チームが必要となってくる(図表)。さらには、機械学習や自然言語処理など、AI(人工知能)技術の応用も重要だ。データ量と処理能力の同時拡大が、投資における意思決定の改善を通じて、長期的かつ持続可能な競争力を金融機関にもたらすだろう。

オルタナティブデータの活用には、データ処理能力が不可欠

現時点の金融業界は、データ先行型の競争激化に伴う業務面、規制面、技術面のリスクを探っている段階だ。AIなど最新テクノロジー導入のためには、足元では効果的なリスクマネジメントが焦点となる。

今後の展望は。

フランチック 2019年に実施したGreenwich Associatesの別の調査によれば、プロトレーダーの95%は金融取引におけるオルタナティブデータの果たす重要性が今後も増大すると考えている。さらに同調査では、銀行やその他金融機関の85%で、データマネジメントの拡充のための支出拡大を計画しているとの結果が示された。

今後、投資家や金融機関は投資判断の向上のため、ますますデータ専門家やテクノロジーへ投資を拡大していくだろう。我々データ提供会社には、資産運用業界を支援する大きな契機だ。

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