市場に見透かされた黒田発言
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主任エコノミスト
藤代 宏一(ふじしろ・こういち)
2005年4月第一生命保険入社。2008年4月みずほ証券出向。2010年4月第一生命経済研究所出向。2010年7月内閣府経済財政分析担当にて2年間経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成を担当。2012年7月副主任エコノミストを経て、その後第一生命保険より転籍。担当は、金融市場全般。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、2018年~参議院予算委員会調査室客員調査員
「この先も、金融緩和の手段としてマイナス金利の深掘りというのは選択肢の1つであるということでしょうか」――。
2019年12月の金融政策決定会合後の記者会見で某メディアから単刀直入な質問があった。それに対して日本銀行の黒田東彦総裁は、「その通りです」と歯切れよく回答し、マイナス金利深掘りの用意があることを明示した。
かねてより黒田総裁は、マイナス金利の深掘りは「必ず選択肢に入っている」として「モメンタムが損なわれる恐れがある場合には、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」と繰り返してきた。記者会見での発言は、追加的な緩和姿勢に変化がないことを印象付ける狙いがあったと考えられる。
しかしながら、黒田総裁の記者会見での発言に対して金融市場は一切反応を見せなかった。筆者をはじめとした市場参加者は、それが黒田総裁の演技であることを見透かしていた。緩和手段が尽きていることを市場参加者に悟られないよう黒田総裁はあえて語気を強めているのだ。
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