「金融」「非金融」の区分をなくしサービスを横断的に見直す
非金融業のプレーヤーによる金融サービスへの参入についての争点も見てみよう。例えば、仮想通貨交換業者、GAFAや楽天などのプラットフォーマーなどが、昨今は一斉に送金サービスを開始している。サービス内容は、まさに金融機関の本業と同等にも関わらず、これら非金融業には統一的な金融規制が敷かれていない。
参入する非金融プレーヤーがますます多様化する中、世界各国の規制に関する動きは追い付いてない状態である。非金融業によるサービスはグローバル化が前提である場合が多いため、国際的な合意が必要だが、規制の対象、規制主体、規制の手法および執行方法などをめぐって詰めるべき点は依然として多い。
そもそも非金融業の新しいプレーヤーにとって、送金サービスは唯一の業務ではないほか、彼らの狙いは金融データにあることを理解する必要がある。これからは、データが価値を持つ時代だ。
GAFAなどは、eコマース(電子商取引)と検索データ、それらに金融データも紐(ひも)づけて付加価値を生み出し、新たなビジネスモデルを展開しようと将来を見据えている。そうなれば、金融という括(くく)りでは収まらない事態に発展することになる。
データ利活用が主となるならば、個人情報や公正な競争の確保の法整備など、金融当局の管轄を超えるテーマも含まれる。また、最初からグローバルに展開するGAFAなどのプラットフォーマーに対して何らかの規制をかけるとすれば、一国だけが法整備を進めても意味がない。そもそもGAFAなどは一国が立ち向かう相手としてあまりに巨大かつボーダーレスで、手に負えないことは自明だ。
非金融業にかかわる規制で、何か対応策は講じられないのだろうか。これまでは、「金融は金融」「証券は証券」といったように、業種ごとで規制を敷いてきた背景がある。しかし、金融業と非金融業との境目がなくなってきた今、業種ではなく、横断的にサービスで区分することも可能であると考えられる。例えば、「データ」領域に着目してみよう。GAFAなどが提供する送金サービスのGooglePay、Apple Payなども「データ」領域に含まれ、必ずしも金融規制のみの対象とはいえないだろう。
送金サービスに伴うデータ利活用の側面に着目した場合、金融庁の所管する金融規制だけで対応するのか、それともデータや個人情報保護の観点から、例えば個人情報保護委員会などが一層関与するのかを検討する必要があるだろう。今後は、サービスを提供する主体・業者をベースに規制するよりも、データ利活用という機能をベースにした規制のほうが実効的かもしれない。
いずれにせよ、海外との連携は今以上に必須となるだろう。さらに、金融サービスにおけるITやデータの利活用がますます重要になるのに対応して、規制監督する当局におけるITシステムの構築・強化が急務だろう。グローバル金融規制に関する課題は、依然として山積みである。