米国の著名な投資アドバイザー、ゲイリー・ブリンソンらの研究によると、「運用パフォーマンスの9割以上はアセットアロケーション(資産配分)で決まる」という。年金基金などの機関投資家にとってポートフォリオ戦略は、それほど重要なウェートを占めている。2008年のリーマン・ショックを契機に大きく動き出した機関投資家のポートフォリオ戦略のいまを探る。(工藤晋也)
Part 1 覆された定説
ダイナミックな資産配分へ
相場環境と会計制度の変化で“持続可能性”を重視した戦略へ
年金基金をはじめとした機関投資家は、これまで政策アセットミックスと呼ばれる基本ポートフォリオを設定し、実際のアセットアロケーションとのかい離を定期的に是正するリバランスを行うことが運用目標達成のポイントとされてきた。実際にこの定説を守っていれば、1990年代までは資産の成長を結果的に実現できていたのである。
しかし、2つの変化によって定説が覆されることになる。1つが「相場環境の変化」だ。1980年代から90年代にかけて世界の株式相場は右肩上がりで推移してきたが、2000年代に入ると一転、ほぼ横ばいか下落の相場環境が続くようになった。
もう1つは、年金基金を直撃した退職給付会計制度などの「会計制度の変化」だ。2000年度に導入された退職給付会計制度により、年金基金は積み立て不足を退職給付引当金として貸借対照表に記載しなければならなくなった。もし大幅な積み立て不足に陥ると格付けが低下し、母体企業が資金調達に苦しむ可能性も考えられる。
この「相場環境」「会計制度」という2つの変化によって機関投資家の多くはこれまでの定説を見直し、“持続可能性”を重視した新たなポートフォリオ戦略へ舵を切ることになった。
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