技術開発と収益向上の好循環
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アジア経済研究所 開発研究センター
企業・産業研究グループ 副主任研究員
丁 可(てい・か)
経済学博士。1999年中国南京大学卒業。2005年名古屋大学博士課程単位取得退学、アジア経済研究所入所。専門分野は中国経済、中小企業、グローバルバリューチェーン、起業とイノベーション。近年、深圳を中心に、中国のイノベーションエコシステムに関連する調査研究に従事
米中貿易戦争で一躍有名になった華為技術(ファーウェイ)は、中国を代表するハイテク企業である。通信機器メーカーとしては世界最大手で、スマートフォンの出荷台数もサムスンに次ぐ世界第2位だ。同社は、常に売上の10%以上を研究開発に投入しており、2018年の研究開発費は世界5位の1015億人民元(約1兆6000億円)に達している(図表)。
ファーウェイ最大の強みは、通信機器分野で蓄積してきた技術やノウハウを携帯電話などの端末事業へ活用し、端末販売で得られた収益をさらに通信技術開発に投入する、という技術開発と収益向上の好循環を作り出したことにある。同じ通信機器大手のノキアとエリクソンは、フィーチャーフォンで成功したものの、スマートフォンの時代に入るや否や、市場からの撤退を余儀なくされた。
しかし、ファーウェイは中国市場での優位性を生かすとともに、半導体事業への早期参入を通じて、スマートフォン端末市場でも確たる地位を獲得できた(図表の消費者向けビジネスを参照)。4G(第4世代移動通信システム)技術以降のスマートフォンでは通信機能への要求水準が一気に高まったため、ファーウェイの優位性はますます揺るぎないものとなった。
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