羽田空港に近い天王洲アイルのJAL企業年金基金を訪れました。JAL(日本航空)といえば今も昔も「憧れの職種」「人気企業」ですが、2010年に経営破綻し、その後V字回復した激動の歴史を刻んでいます。企業年金基金も大きな荒波を受けて本業同様、従前にも増して「安全第一」を徹底した資産運用を標榜しています。今回は、国内外の拠点で幅広い業務に携わった経験を持つ上野洋(うえの・ひろし)常務理事に、年金資産運用の考え方や、これまでの貴重な経験を伺いました。

上野洋(うえの・ひろし)常務理事
「ジャパン・アズ・NO.1」と言われた時期の入社。その後に「天国と地獄」を経験したことが、企業年金運営の基盤になっている=東京都品川区東品川の本社で

JAL企業年金基金の概要

  • 所在地/東京都品川区東品川2丁目
  • 設立年月/2008年10月に代行返上し企業年金基金
  • 資産総額:約2900億円
  • 加入者:約12000人 受給者:約10000人
  • 予定利率:1.6%
  • 期待運用収益率:1.6%

(いずれも2024年3月末現在)

ナショナル・フラッグが経営破綻

JALの企業年金を語る場合に避けて通れないのが本業の歴史、とりわけ「ナショナル・フラッグ」として超一流の存在だったのがなぜ2010年1月に会社更生の手続きに追い込まれて経営破綻したのか。そして、その後どのようにして驚異的とも言えるV字回復を遂げたのか、ということです。

上野 個人的な受け止めとして経営破綻の理由は、直接的には2008年9月のリーマン・ショックだと考えています。ただ、それ以外にも原因は複数あり、それらが複雑に重なったためだと思います。

JALでの勤務経験がある戸崎肇・早稲田大学教授(航空産業・政策)が2012年段階で次のようにまとめています。

①供給座席が需要に対して過剰になりがちな大型機材の大量保有
②採算性の見通しの甘い投資案件
③長期にわたる為替差損
④複数の労働組合が存在するなど複雑な労使関係や「労労」関係

こういった指摘は妥当だったのでしょうか。ただ、こうした理由だけで2010年3月期に1337億円の営業赤字だったのが、2年後の2012年3月期に2049億円の営業黒字に転換したことを説明できないように思います。

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