「The Golden Opportunity」:金はなぜ投資ポートフォリオに不可欠な資産クラスなのか【寄稿】ファースト・イーグル・インベストメンツ
複雑なグローバル市場を攻略するうえで、金は他と一線を画す傑出した資産だ。その唯一無二のリスク・リターン特性によって、多様なマクロ経済環境においても、あるいは市場が大きな混乱期にあっても、実質的な価値を維持してきた。これは稀有な“偉業”である。
過去2世紀だけを見ても、金は、インフレの拡大とデフレ・スパイラル、政治革命とテクノロジーの急速な進化、地域紛争と世界大戦、そしてパンデミックを乗り越えてきた。
銅、石油、銀、プラチナなど、投資家がインフレヘッジとして検討するであろう他のコモディティや実物資産とは異なり、金の産業用途は限られているため、企業活動へのβ(ベータ)は実質ゼロだ。これらの資産は、供給量が相対的に限られ、不換紙幣の価値が下落するインフレ期にも実質的な価値を維持してきた歴史を持つという点で金と共通する部分もあるが、経済活動に対する感度が高いことが景気低迷期やデフレ期の潜在的ヘッジとしての評価を損なう要因となっている。
歴史的に見て金は、長期にわたって実質的な価値を維持しており、様々な経済状況に耐えうる希少な資産だ。このレジリエンス(回復力)から、金は市場、マクロ経済、地政学上の様々な混乱に対する潜在的なヘッジになっている。
金の性質は、ヘッジの手段として検討対象となる他の金融資産とも異なる。名目・実質利回りが2000年代半ばに起こった金融危機当時の水準に戻ったとはいえ、先進国の膨大な公的債務によって国債リスクが高まっている。オプション等のデリバティブは代替的なヘッジ・メカニズムではあるが、導入コスト、流動性の低さ、カウンターパーティ・リスクなどの制約が伴う。
最近ヘッジの新たな選択肢に暗号通貨が加わり、推進派は往々にしてビットコインを 「デジタル・ゴールド」と呼ぶ。しかし、暗号通貨は非常に歴史の浅い資産クラスであり、様々な経済体制におけるその挙動は、まだ理論的な部分が大きい。対照的に金は、数千年もの長きにわたって信頼できる価値貯蔵手段としての機能を果たし、数々の存亡の危機を乗り越えてインフレ調整後の購買力を維持してきたことを我々は経験知として知っている。
金への戦略的資産配分とエクスポージャー
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