修正幅が大きい建設総合統計受け、1~3月期GDP第2次速報値(改定値)を、日銀短観6月調査に併せて同時発表の異例事態

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

2024年7月1日はエコノミストにとって、とても忙しい日になった。金融マーケットで注目度が非常に高い、日銀短観とGDP統計が同時刻に発表されるという、前代未聞の事態になったからだ。

四半期データの日銀短観の発表日は、12月調査が12月半ばに発表されるのを除き、3月調査、6月調査、9月調査は翌月の第1営業日に発表されることになっていて、今回も6月調査・日銀短観が7月1日午前8時50分発表というのは、早くから決まっていた。

内閣府が、1~3月期GDP第2次速報値(改定値)を7月1日午前8時50分に公表すると発表したのは6月25日と直前だった。改定の理由は、6月25日に国土交通省より、建設総合統計(2024年4月分)が公表され、その中で、2020年度以降についての遡及改定が行われた。これを受け、建設総合統計を基礎統計とする需要項目である「民間住宅」、「民間企業設備」および「公的固定資本形成」などについて改定することになったという。

通常、GDP算出に利用する個別統計の過去分の修正は翌四半期のGDP以降に反映するが、建設総合統計の修正幅が大きく、24年4~6月期GDP第1次速報値が公表される8月15日までの期間が長いことから今回は異例の改定公表となったようで、建設総合統計の修正のみを反映している。

建設総合統計は、国内の建設活動を出来高ベースで把握することを目的とした 加工統計である。建築着工統計調査および建設工事受注動態統計調査から得られる工事費額を、着工ベースの金額としてとらえ、これらを工事の進捗に合わせた月次の出来高に展開し、月ごとの建設工事出来高として推計している。また、毎年6月(4月分公表時)に、確定した建設投資額の実績値から算出される直近の補正率を用いて、直前の3月分から過去3カ年分を遡及改定している。

6月の「月例経済報告の関係閣僚会議資料」に掲載されたグラフを見ると、公共工事出来高の最近の動きが大きく変動していることがわかる。23年度はGDP統計でも公共投資が下方修正となることを示唆していた。

【図表1】公共工事出来高
図表1 公共工事出来高
出所:内閣府の6月月例経済報告の関係閣僚会議資料からコピー

2024年1~3月期実質GDP第2次速報値(改定値)前期比年率▲2.9%と▲1.8%から減少率、下方修正。

1~3月期実質GDP第2次速報値(改定値)前期比年率▲2.9%と第2次速報値の同▲1.8%から減少率が大幅に下方修正された。個別項目では公共投資が前期比+3.1%の増加から▲1.9%の減少に大幅に下方修正されたのが目立つ。

実質GDPは22年度が住宅投資と設備投資が上方修正され、前年度比は+1.7%と+1.6%から上方修正された。公共投資の前年度比は変わらなかった。23年度は住宅投資と設備投資に加え、公共投資が下方修正され、実質GDPは+1.0%と+1.2%から下方修正となった。公共投資の前年度比が+4.0%から+0.8%へと大幅に下方修正となった。

23年度の実質GDPは4~6月期以降の全四半期で前期比年率の伸び率が下方修正された。ただし、10~12月期は+0.1%のプラスにとどまり、実質GDPが7~9月期から1~3月期まで3四半期連続マイナス成長になることは回避された。

【図表2】内閣府:実質GDP成長率と主な項目。7月1日の改定状況
内閣府:実質GDP成長率と主な項目。7月1日の改定状況
(注)上段:前期比、( )内は前期比年率、下段:前年同期比。[ ]内は上段:前期比寄与度、下段:前年同期比寄与度。
出所:内閣府
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日銀短観6月調査、大企業・製造業・業況判断DI+13と、3月調査+11から2期ぶり上昇。大企業・非製造業・業況判断DI+33と、3月調査+34から16期ぶり低下。

日銀短観6月調査の大企業・製造業・業況判断DI は+13と3月調査+11から2ポイント、2期ぶりに改善した。9月までの先行きは+14と1ポイント改善の見込みとなった。型式不正問題が懸念された自動車は+12と3月調査から1ポイントの小幅悪化にとどまった。また先行きは2ポイント悪化で+10と2ケタのプラスを維持するかたちになった。

全規模合計の製造業・業況判断DIは3月調査+4、6月調査+5、9月見通し+6と緩やかな改善基調が続く形である。緩やかな景気回復が継続するという予測を支持する数字になっている。

関連指標のQUICK短観6月調査・製造業・業況判断DIは3月調査の+7から14ポイント改善し+21。一方、ロイター短観6月調査・400社ベース・製造業・業況判断DIは3月調査の+10から4ポイント悪化し+6だった。QUICK短観が改善、ロイター短観・400社ベースが悪化を示唆するという関連統計の方向性が真逆になる珍しい状況だったが、今回はQUICK短観と同じく、改善方向の動きとなった。

日銀短観6月調査の大企業・非製造業の業況判断DIは+33と、こちらは3月調査の+34から1ポイント低下し、16期ぶり悪化した。円安水準による原材料高や人件費の上昇が重しになったと見られる。9月までの先行きは6ポイント低下し27になる見通しだ。

最近の『景気ウォッチャー調査』などをみても、これまで好調だったインバウンド関連の景況感の押し上げ効果が幾分弱まっている感じがしたが、宿泊・飲食サービスの業況判断DIは+49と、3月調査の+52から3ポイント低下、9月までの先行きは7ポイント低下し42になる見通しだ。日銀短観でもインバウンド関連は高水準ながら、変化の方向は弱含みだ。

関連指標のQUICK短観6月調査・非製造業・業況判断DIは+30と3月調査の+34から4ポイントの低下。ロイター短観6月調査・400社ベースの非製造業の業況判断DIは3月調査の+32から1ポイント低下し+31だった。QUICK短観、ロイター短観・400社ベースとも低下の見通しで、日銀短観も同様の結果になった。

【図表3】日銀短観とロイター短観(400社ベース)、QUICK短観(大企業)の業況判断DI比較
日銀短観とロイター短観(400社ベース)、QUICK短観(大企業)の業況判断DI比較
出所:日本銀行、トムソン・ロイター、QUICK
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