会員限定
来週を考える|The Week Ahead 金融政策以外に目を向ける2024年6月7日(金)配信号
今年最初の数カ月間、資本市場の注目を集めたのは、いつ、どの程度の利下げが行われるかということでした。市場関係者の年初の予想では、米国で6回の利下げが見込まれていましたが、現在の利下げ回数予想はそれよりはるかに少ない2回未満となっています。現時点では、欧州中央銀行(ECB)は、利下げに向け幅広く地ならしをしてきたこともあり、6月の会合で実際に主要金利を引き下げると見られます。対照的に米連邦準備制度理事会(FRB)とその他の中央銀行はしばらく様子見を続け、彼らの言う「データ次第」の政策を続行するでしょう。
しかし、金利の見通し以外にも注目すべき動きは数多くあります。それらも、投資機会につながるかもしれません。
- 今後数週間は、欧州が注目を集めそうです。サッカーファンだけでなく、投資家にとっても、「旧大陸」がより興味深い存在になる可能性があります。前述したように、ECBが主要中央銀行の中で利下げに踏み切る可能性が最も高いことは、ユーロ圏にとって有利に働くでしょう。さらに、ほとんどの国が景気サイクルの底を通過したように見受けられ、特に景況感と先行指標が上向いています。外国からの受注が底打ちしつつあることは、輸出業者にとって喜ばしい材料です。欧州の選挙も、ある程度注目を集めるでしょう。市場への短期的な影響は限定的と思われるものの、財政規則や競争・通商政策は長期的な見通しに大きな影響を及ぼします。さらに、英国での選挙は意外なほど早く、7月初旬に行われます。国内投資家は、政権交代の可能性について非常に冷静に受け止めているようです。労働党は、現実的かつ実利的な政策を掲げて選挙を戦っているように見受けられます。これを受け、ブレグジット以降英国の資産の重荷となってきた政治的なリスクプレミアムが縮小する可能性があります。
- 中国当局は、長引く不動産危機への対策を強化しています。特に、未販売(場合によっては、未完成)の住宅用不動産在庫の削減が図られる予定です。そのため、不動産購入に関する規制が緩和され、新たな買い手を呼び込むために住宅ローン金利が引き下げられています。同時に、地方政府は開発業者からマンションを買い取るために複数の手段を講じることになっており、そのための財政支援を中央政府や中央銀行から受けています。中国の国内総生産(GDP)のおよそ4%がこうした取り組みに使われる可能性があります。株式市場を下支えする措置と合わせ、こうした材料は、苦戦していた香港と上海の株式市場に新たな活気を吹き込んでいます。
- 銅価格は過去最高を記録しています。背景には、中期的な供給見通しが限定的であること、電化の流れを受けて需要が構造的に増大していること、そして中国をはじめとする各国の経済指標が改善していることがあります。他の工業用金属も最近、値上がりしています。一般には、これは世界経済の健全な成長の兆候と言えます。実際、弊社は世界の成長率が現在、潜在成長率に近づいていると考えています。これは、設備稼働率がほぼ正常であることを意味します。同時に、需要を鈍化させることなくインフレを抑制することがいっそう困難になることも意味します。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。