REIT NAV割れは長期化。金利リスクと内部成長が課題
「日銀リスク」が重しに
2022年12月の日銀による第一段階のYCC(イールドカーブコントロール)修正の後にNAV(純資産価値)を割り込む水準へ下落した東証REIT指数は、2023年も調整圧力の強い展開が続き、NAVを回復することはできなかった。2023年の東証REIT指数の総合リターンはマイナス0.5%となり、プラス28.3%で着地したTOPIX(東証株価指数)を大きくアンダーパフォームした。
金融緩和の強化期待はREIT(不動産投資信託)がTOPIXを大きくアウトパフォームする背景となっていた。2012年や2014年は日銀による大規模金融緩和期待がREITを押し上げた。2016年にはマイナス金利の導入がREITの追い風となった。逆に言うと、金融引き締めはREITにとって大きな逆風になることが容易に想像できる。金利上昇は、高配当利回りの魅力が低下するバリュエーションの側面と、支払金利の増加による利益減少の両面からREITにはマイナスとなる。
米国では2022年から2023年にかけて急激な金融引き締めを続けてきたが、現時点ではその出口を探りつつある段階に入っており、世界的にはREITにとってはポジティブな進展となろう。一方、日本においては、日銀はこれからマイナス金利の解除、あるいは状況次第では政策金利を引き上げることを検討する段階に入ることとなる。
REITの主要な投資家層の一つである地銀などの国内金融法人は、金利上昇リスクが拭(ぬぐ)い去れない中で、積極的にREITの残高を積み増す動きは乏しい。また、海外投資家にも同様のことが言える。2022年末の日銀によるYCC修正を受けて、2023年初頭には海外投資家がREITを売る動きが目立ったが、投資を本格化させるにはある程度日銀政策修正リスクを消化する必要があろう。
経営方針はアップデートなし
現在のREITの低迷のもう一つの大きな要因となっているのが、REITの経営方針がインフレに対応してアップデートされていない点である。
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