家計と企業のバランスシートが健全

BNPパリバ証券 経済調査本部長 チーフエコノミスト 河野 龍太郎
BNPパリバ証券
経済調査本部長 チーフエコノミスト
河野 龍太郎

米経済への楽観が広がっている。FRB(米連邦準備理事会)の高金利政策の影響で、米経済は早晩減速するという見方が少なくなかったはずだ。振り返れば、2022年末から減速論は繰り返されていた。またぞろ2024年初にも減速という言説が聞かれていたが、年明け以降の経済データが示すのは、むしろ好調が続いていることだ。

筆者は、2023年春から米経済のノーランディング、あるいは、ソフトランディングをメインシナリオとしてきた。最大の理由は、家計と企業のバランスシートが健全なことだ。背景には、コロナ禍の財政政策を通じ、政府から家計や企業に大規模な所得移転が行われたことがある。

通常、不況は景気拡大局面における過剰の蓄積が原因となる。今回は家計と企業のバランスシートが健全だから、高金利が続いても個人消費や設備投資の抑制につながっていないのだ。また、人手不足を背景にエッセンシャルワークの実質賃金が上昇し、低所得層の実質所得が増えたことも個人消費の堅調さを支える。

■米国のPCEデフレーター(前年比、%)
■米国のPCEデフレーター(前年比、%)
出所:Macrobondより、BNPパリバ証券作成

米経済への楽観のもう一つの背景は、総需要が堅調であるにもかかわらずインフレが鎮静していることだ。インフレ鎮静は、需要減速ではなく供給サイドの改善が大きく影響している。コロナで退出した高齢者は労働市場に戻ってこなかったが、プライムエイジの労働力が大きく増えた。コロナ前の水準に復帰しただけでなく、なお増加傾向にある。

さらに、生産性の改善も加わる。コロナ禍で衛生面の要請などから自動化など省力化投資が広がったが、それが生産性上昇率を改善させた。また、コロナ後の経済再開で米国は大転職時代を迎えたが、労働者が高い賃金を支払う企業にシフトしたことの影響も大きい。経済全体で見ると、賃金上昇圧力は高生産性部門への労働力シフトによる生産性上昇率の向上で吸収されたのだ。

インフレ鎮静による早期利下げ観測から、長期金利は2023年秋から1%も低下した。こうしたサプライサイドの改善と相まってリスク資産価格が上昇し、それが同時に総需要を刺激するという好循環も訪れている。

トランプ再選と「平和の配当」

3つ目の楽観は、意外なことだが、トランプ前大統領再選の可能性が高まっていることかもしれない。空前の低失業率でも、現職のバイデン大統領の支持率はパレスチナ紛争対応のまずさもあって低迷を続けたままだ。

この記事は会員限定です。

会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。
新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。

会員ログイン
新規会員登録(無料)
利用規約

第1条(本規約)

株式会社エディト(以下「当社」とします)は、当社が提供する「J-MONEY Online」(以下「本サイト」とします)について、本サイトを利用するお客様(以下、「会員」とします)が本サイトの機能を利用するにあたり、以下の通り利用規約(以下「本規約」とします)を定めます。

第2条(本規約の範囲)

本規約は本サイトが提供するサービスについて規定したものです。

第3条(会員)

本サイトの会員は、機関投資家や金融機関の役職員、事業会社の経営者・財務担当者、その他金融ビジネスに携わる企業や官公庁、研究機関などの役職員、もしくは専門家のいずれかに該当していることを条件とし、登録の申し込みを行うには、当社が入会を承諾した時点で、本会員規約の内容に同意したものとみなします。なお、申込に際し虚偽の内容がある場合や本規約に違反するおそれがある場合には、当社は会員登録を拒否もしくは抹消することができます。

第4条(ユーザー名とパスワードの管理)

ユーザー名およびパスワードの利用、管理は会員の自己責任において行うものとします。会員は、ユーザー名およびパスワードの第三者への漏洩、利用許諾、貸与、譲渡、名義変更、売買、その他の担保に供するなどの行為をしてはならないものとします。ユーザー名およびパスワードの使用によって生じた損害の責任は、会員が負うものとし、当社は一切の責任を負わないものとします。

第5条(著作権)

本サイトに掲載された情報、写真、その他の著作物は、当社もしくは著作物の著作者または著作権者に帰属するものとします。会員は、当社著作物について複製、転用、公衆送信、譲渡、翻案および翻訳などの著作権、商標権などを侵害する行為を行ってはならないものとします。

第6条(サービス内容の停止・変更)

当社は、一定の予告期間をもって本サイトのサービス停止を行う場合があります。 会員への事前通知、承諾なしに本サイトのサービス内容を変更する場合があります。

第7条(個人情報の取扱い)

当社は、会員の個人情報を別途オンライン上に掲示する「プライバシーポリシー」に基づき、適切に取り扱うものとします。

必須 私は、利用規約およびプライバシーポリシーに同意したうえで、会員登録を申し込みます。

本サイトからのメールは「●●●●●●@j-money.jp」という形式のメールアドレスで送信いたします。メール規制の設定をされている方は、「j-money.jp」のドメインからのメールを受信できるよう設定をお願いします。

必須=必須項目