年金資産運用・基礎の基礎【実務編】 【ポートフォリオ構築のABC】番外編 なぜ株式と債券にも正相関が発生するのか〜実質金利や期待インフレ率に対する感応度の違いに注目
【ポートフォリオ構築のABC】前回の第3回では、政策アセットミックスの策定方法についてラッセル・インベストメントの金武伸治さんに詳しく説明していただきました。この中で期待リターンやリスク、相関係数について触れたわけですが近年、株式と債券の相関関係が高まる現象が見られます。そこで第4回に移る前に今回は「番外編」として、こうした現象が発生する背景や今後どういった場合に再発し得るのかについて、深掘りをお願いしました。
株式と債券の相関は変化する
株式と債券の相関関係は本来「逆相関」で、最近見られる「正相関」はやや異常な事態というのが教科書的な理解だと思っていました。
金武 もともと株式と債券の相関関係は、低相関ないしはやや逆相関とされてきました。そのため、分散投資によるリスク低減効果が期待されていたわけです。
定量的には、2001~2021年の株式(MSCI Kokusai 円ベース)と債券(FTSE 世界国債除く日本円ヘッジ)の相関係数は▲0.4程度となっています。また定性的にも、リスク資産が上昇するリスク・オン時には、投資資金が債券から株式へと向かい、逆にリスク資産が下落するリスク・オフ時には、株式から債券へと逃避する現象が見られます。
しかし特に2022年以降、米国の利上げとともに株式と債券の相関係数は上昇しました。このように、実は株式と債券の相関係数は決して安定しておらず、局面に応じて上下動します。言い換えると、分散効果が発揮しやすい局面と発揮しづらい局面があるのです。【図表1】で2002年以降の株式と債券の相関係数の推移を示しました。
政策金利と実質金利は連動
よく金融緩和時には金利が低下するので債券が上昇し、景気が刺激されるので株式も上昇すると言われますよね。逆に金融引き締め時には、金利の上昇により債券が下落し、景気が抑制されるので株式も下落するというのが通説です。こうした現象は、やはり株式と債券の相関関係に関係しているのでしょうか。
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