イラン情勢と「半減期」で相場堅調

FXcoin 松田康生氏
FXcoin
シニアストラテジスト
松田 康生

2020年1月上旬、2割近い上昇を見せるなど堅調な値動きを見せているBTC(ビットコイン)相場だが、買いの背景はイラン情勢だけでない。同年5月13日頃と予測される半減期の影響を指摘する声も大きい。

BTCに代表されるブロックチェーン技術では、各ブロックに格納された取引情報をマイナー(採掘者)と呼ばれる記録者が複雑な暗号計算を行うことで真正性を担保している。10分ごとのブロック生成に際し、世界中のマイナーが競争し、最初の暗号を解いたマイナーに報酬が支払われる。こうした取引情報のブロックへの格納とインセンティブに誘導されたマイナーの暗号解読競争により、コピーや改ざんが難しい電子データを誕生させた。

既にBTCに投入される計算量は1秒間に1垓回に達し、計算内容は異なるがスーパーコンピューター「京」1万台分を投入しているイメージだ。それを過去に遡ってデータを書き換えて計算し直すのに必要な計算量は膨大すぎてコストに見合わないと考えられている。その結果、誕生した書き換え不能なデジタルデータは産業界の様々な分野への応用が期待され、そのオリジナルであるBTCもデジタルゴールドとして人気を博している。また、離れた地域間でのお金の受け渡しに仲介者が不要となり、世界の金融を根底から変えかねないとされている。

半減期とはそのマイナーの報酬が半分になることで、BTCの場合は約4年ごとに半減、今回は1回12.5BTCが6.25BTCになる。報酬が半分になるとマイナーがやる気を失って価格が下落しそうなものだが、逆に価格が上昇するカラクリはビットコインの需給構造を考えると理解できる。

ビットコインにおける実需取引とはマイナーの売りだ。すなわち受け取った報酬を法定通貨に変換して電気代や土地代、人件費、マイニング機器の減価償却などに充当する。この断続的な売り圧力が急に半分になるので価格が上昇しやすい訳だ。今回はBTCの供給が1日1800BTC(約16.2億円)から900BTC(約7.2億円)に半減され、売り圧力が緩和される。

BTC(ビットコイン)半減期前後180日の値動き(半減期=1)

市場に根強い情報の非対称性

前述の通り半減期がBTCの上昇要因であることは議論を待たないが、問題はこの様に誰もが知っている材料がいつどのように市場に影響をおよぼすかだ。効率的市場仮説によれば、市場参加者間に情報の非対称性は存在せず、新たな情報は瞬時に市場価格に織り込まれる。為替市場などではロイターやブルームバーグなどを通じてあらゆる経済指標やニュースは瞬時に市場参加者に共有される。そうであるならば、半減期は既にBTC価格に織り込まれているはずだ。

しかし、個人中心で情報インフラも未発達の仮想通貨市場ではどうしても情報の非対称性は残るし、半減期による需給インパクトは、やってみなければわからない部分があるので、完全に織り込まれているとは言い難い。そこで過去のパターンで見てみると、まず半減期前の180日間に1.5~2.5倍に上昇、それぞれ半減する日の25日前、103日前にピークを迎えている。今回では、2020年2月から4月にかけて120万~200万円、中央をとって同年3月に160万円でピークを迎えると予想する。

供給サイドの緩和に対し、需要サイドはどうだろうか?「 21世紀の貨幣論」を著したフェリックス・マーティン氏は、仮想通貨への人気を社会契約論のジョン・ロックの貨幣観の回帰だとした。近年の際限のない中央銀行のバランスシートの拡大へのアンチテーゼとして、プログラムにより厳格なルール化された世界への憧憬ないし資産逃避が生まれたとする。FRB(米連邦準備理事会)のバランスシート再拡大によって、米株は史上最高値、金も6年ぶりの高値、長期金利も低下し、市場は空前の流動性相場を謳歌している。イラン問題でさらにFRBが緩和姿勢を強める可能性もある。BTCはまだ買われても不思議はない。