円安とキャリートレード相場の終焉 世界の安定的な不均衡と円キャリートレードに転機。ドル円は2024年に最大115円まで下落の可能性
2022年11月以降、主要3通貨は円に対して一時的な下落傾向をたどった。しかし、米国・欧州・英国の中央銀行は2023年以降も利上げを継続し、主要3通貨は2023年2月以降、対円で上昇トレンドに復帰した。2022年以降、ドル円相場が大幅に上昇した背景を振り返るとともに、今後、ドル安円高相場に反転する可能性を論じる。(記事内容は2023年11月23日時点)
インフレと金融政策の格差が招いた2022年以降の円独歩安
図表1は、ドル円、ユーロ円、英ポンド円相場について2022年1月3日を100としてプロットしたものである。今般のキャリートレードが主導する円安相場が2022年3月に始まったことが分かる。同期間を通じて、ドル円相場がほかの2通貨ペアをアウトパフォームしている。ドル円相場は2022年10月に130の最高値まで上昇している一方、ユーロ円とポンド円相場の同年中の最高値はそれぞれ113と110にとどまった。
円安の主因は無論、米国・ユーロ圏・英国と日本との間のインフレ格差と金融政策の跛行(はこう)性である。日本(東京都区部)のコアCPI(食品・エネルギーを除く消費者物価)は、2021年1月の前年比0.2%から2022年1月にはマイナス1.2%まで下落した。一方、米国・ユーロ圏・英国では2022年初頭からインフレ傾向が顕著となり、2022年中に米国のコアCPI は6.6%(9月)、ユーロ圏と英国がそれぞれ5.2%(12月)と6.5%(9月)まで上昇した(図表2)。これらを受けて、日銀が金融緩和政策を維持したのに対して、米国・ユーロ圏・英国の各中銀は政策金利の引き上げを開始した。
Fed(米連邦準備制度)は、2022年3月にゼロ金利政策を解除、同年12月にはFF(フェデラル・ファンド)レートは4.25~4.50%に達した。一方、ECB(欧州中央銀行)は、2022年7月にマイナス金利を解除、同年12月には各政策金利を2.00~2.75%まで引き上げた。
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