企業業績改善で投資環境は良好

新井 洋子
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
チーフ・グローバル投資ストラテジスト
新井 洋子

2020年の世界経済は、成長率が前年から上向くものの低成長が続き、インフレ率の上昇は抑制された、いわゆる「適温経済」が続こう。2020年の成長をけん引するのは、前年に経済が落ち込んだ新興国と見ている。先進国は、トランプ減税を受けた米国の高成長が落ち着く中、成長率の小幅な低下が予想される。

このように、2020年の成長見通しは、外部環境の変化や自国の政治情勢などに影響を受けやすい新興国依存であり、下方リスクはある。ただ、各国はすでに財政拡大と金融緩和を進めている。その効果が期待されることに加え、状況に応じた追加策が予想されるため、2020年の世界経済は適温状態が続く可能性が高いだろう。

世界情勢を巡る先行き不透明感は増しているものの、適温経済の下、良好な投資環境は当面続くと見ている。2020年のグローバル株式市場は製造業を中心とする企業景況感の改善に支えられるだろう。2019年末にかけて、グローバル株式市場は米中貿易摩擦の業績への悪影響を織り込む動きが一巡し、期待先行的な上昇局面となった。

2019年8月末からの各地域別の株価騰落率を要因分解すると、EPS(1株当たり利益)予想の改善より、PER(株価収益率)要因で説明できる部分が大きいことがわかるだろう。今後、株価がさらに上昇するかは、期待と現実の“答え合わせ”次第と言える。もっとも、足元の日米企業の一部の決算では、半導体市況の回復による業績改善や中国からの受注の底入れが示唆されるなど、“答え合わせ” が上手く進んでいる状況である。

各国主要指数の株価上昇要因の分解

世界各国のセンチメントは向上

日本市場は、中国の設備投資が回復し、製造業の生産が上向く可能性は高い。2019年後半以降の日本株上昇は、PER上昇による影響が他地域よりも強かった。足元の短期的な調整リスクはあるが、業績回復が確認できれば株価は堅調さを維持しよう。また、大型補正予算の編成を決めた財政政策による下支えも期待される。

米国株は、底堅い米景気とFRB(米連邦準備理事会)の金融緩和が引き続き株価をサポートすると見る。米経済は、FRBの「予防的利下げ」の累積効果が企業業績にも好影響が波及しよう。米国の代表的株価指数S&P500のEPSが増益基調に転じるのは第2四半期以降と予想されており、春以降に企業収益が上向くかを注意深く確認したい。

欧州株は米中貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱の不透明感が緩和され、市場のセンチメントは改善している。ドイツ企業のセンチメントを示すIfo景気期待指数は反転してきており、業績好転の兆しがうかがえる。足元で欧州株をけん引しているのはシクリカル(景気敏感)株であり、市場は製造業中心の業績改善を強く意識しているように見える。欧州企業の業績ガイダンスの発表は、先行き改善を示唆する内容となるかどうかに注目が集まる。

新興国株は、米中対立の緩和や各国の金融緩和に加え、世界的な景況感改善で反発が期待される。世界の製造業の中心である中国企業の業績改善が見えてきたこともポジティブな要因だろう。しかし、一時的に米国・イランを巡る中東情勢の悪化など地政学リスクが高まれば、グローバル市場のリスクオフ時には、新興国株の上値が抑えられる点には注意を要する。

ただ、中東緊迫化の悪影響が世界経済や金融市場、そして企業収益に波及するといった事態は考えづらい。緩やかながら世界経済の回復傾向が定着する適温経済の下、地政学リスクへの懸念による一時的な調整後は、各地域の株式市場へ資金が振り向けられる余地が大きいものと考えられる。