世界的に高進するインフレを抑え込むべく進行した利上げの影響で、長年にわたり低金利・低ボラティリティが続いてきた債券の運用環境が転換する“レジームチェンジ”が進行中だ。為替ヘッジコストが高騰した外国債券の投資妙味の下落をはじめ、様々な課題に直面する日本の機関投資家の債券運用について、有識者にポイントを伺った。

金利上昇は債券運用にポジティブ。債券と株式の逆相関も復活か

非グローバリゼーションの進行に伴うエネルギー・商品価格の高騰や、労働力不足などのマクロ要因から高いインフレが生じたことで、米国をはじめとした海外中央銀行の金融政策が引き締め方向へ舵を切り、長年続いた低金利の時代が転換することになった。

現在、過去のハイイールド(HY)社債と同水準にまで投資適格(IG)社債の利回りが上昇するなど、債券利回りは明らかに過去10年間とは異なるフェーズにあることが窺(うかが)える。アライアンス・バーンスタイン 運用戦略部長 兼 ポートフォリオ戦略室長の荒磯亘氏は、こうした現状に、債券のトータルリターンはほとんどインカム利益で説明できるため、金利上昇はポジティブな動きだと力を込める。

荒磯 亘氏
アライアンス・バーンスタイン
運用戦略部長 兼 ポートフォリオ戦略室長
荒磯 亘

「一部インフレ局面に不慣れな市場関係者による楽観的な見方も残るが、今後は先進各国の財政出動の弾切れ感もより顕在化し、景気は緩やかに減速していくと予想している。利上げのリスクを過度に恐れる必要は小さいように思われる」(荒磯氏)

ここで、キャピタル・グループ インベストメント・ディレクターの華村啓陽氏は「低金利環境から利上げ局面を経て、悪者のように見なされてきたデュレーション運用でキャリーを稼げる期待が高まっている。クレジットリスク以外のリターン源泉の選択肢が復活すれば債券運用に追い風だ。同時に金利水準の復活は、機関投資家の大きな関心事だった、株式などのリスク資産に対する逆相関の復活にも繋がると考えている」と力を込める。

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