読者アンケートに寄せられたり、編集部が取材する上で耳にしたりした年金運用のお悩みについて、年金運用コンサルタントとして活躍するニッセイ基礎研究所の徳島勝幸氏に回答いただく本コーナー。第2回となる今回は、マルチアセット運用のポイントについて取り上げよう。

マルチアセット運用の位置付けは?

マルチアセット運用の位置付けについては、複数の考え方があると思われます。まず、いわゆるルックスルー方式で、組み入れている資産ごとに時価を管理して各々の特化型運用の資産残高に加算し、伝統的資産区分の配分比率に算入するという考え方があります。しかし、組み入れ比率の変化が激しいマルチアセット運用では現実的ではないでしょう。また、債券に該当する投資対象が主であるとして債券区分でカウントするという考えもあり得ますが、債券区分のベンチマークであるNOMURA-BPI総合やブルームバーグ債券総合指数(BGA)からの乖離があまりに大きくなってしまうため、適正な管理状態とは言えなくなるのではないでしょうか。

結果として、ヘッジファンドなどと同様に、絶対収益の獲得を目指すオルタナティブ運用として管理したり、マルチアセット運用を独立した資産区分として管理したりすることが適切と考えられます。

海外のマルチアセット運用に類似した運用商品(ユニバーサルファンドや分散型成長ファンドなど)の例を見ると、マルチアセット運用の中にコモディティや新興国株式を組み込んで期待リターンを高めたり、インフラや不動産など個別には投資しづらい対象を組み込んだりした商品もあります。独立した個別の資産区分として考えるのが、最もよい手法と考えられますが、投資金額が小さければ、オルタナティブ投資に含めて管理することも考えられますし、様々なマルチアセット運用を採用するのであれば、特性ごとに高リスク型と低リスク型というようなかたちで複数の資産区分を設定して管理することも考えられます。

2022年度は株式と債券の相関関係が大きく変化し、金利上昇を受けて保有債券利回りがマイナスに陥る中、債券のマイナスを株式の値上がり益でカバーするという多くのマルチアセット運用のコンセプトが機能しませんでした。そもそもマルチアセット運用はマネジャーの投資判断にパフォーマンスを委ねるものであり、委託する根拠になるのは運用成果の確信度でしかありません。マルチアセット運用においては、リスクパリティといったクオンツ的な手法やジャッジメンタルな判断など様々な運用管理が行われていますが、状況の変化に対して柔軟に対応できない可能性も懸念されます。特に、モデルやAI(人工知能)、クオンツ的な手法を採用している場合には、「過去の運用局面に合わせて最適化しているため、類似の環境には機能するかもしれないが、まったく異なる状況では十分な成果を上げることが出来ない」というアクティブ運用などに対する批判通りの結果になるものと思われます。

マルチアセット運用に関しては、過去のトラックレコードが特に参考にならない可能性が高く、手法や方針を強く信頼できるのならともかく、パフォーマンスに懸念があるならば、数年程度で解約し、別の商品に切り替えることが必要でしょう。特に、金融緩和局面で良好な結果を得られた運用は、金融引き締め局面でも同じような手法を継続していると、適切なリターンを継続して獲得することは難しいのではないでしょうか。

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