2023年1~3月期の実質個人消費は、前期比年率プラス4%台に

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

昨年の米国は高インフレとFRB(米連邦準備理事会)の金融引き締めに振り回された感が強い。このため2023年の個人消費は弱含むのではないかという見通しが多かったように思われる。しかし実際には、2023年スタートの1~3月期の個人消費は前期比年率でしっかりした数字になり、実質GDP成長率を押し上げそうだ。

GDP(国内総生産)、厳密にはGDE(国内総支出)の中で一番大きい需要項目は日米とも個人消費である。米国でのシェアは約70%で日本では55%弱だ。米国のGDPでの個人消費の予測は比較的簡単だ。GDP公表日の翌営業日に毎月発表される「個人所得と支出」の中の月次の個人消費のデータの四半期の平均値が、GDPの実質個人消費とピタリと一致するからだ。

2023年3月30日に発表された米国2022年10~12月期最終推定値の実質GDP(季節調整済み年率)は20兆1825億ドル、うち個人消費は14兆2149億ドルでシェアは70.4%である。翌営業日3月31日発表の2月「個人所得と支出」に記載されている月次の実質個人消費(季節調整済み年率)は2023年1月が14兆3829億ドル、2月分が14兆3672ドルである。1~2月の平均は10~12月平均に比べ前期比年率プラス4.6%としっかりした伸び率になっている。

2023年4月27日公表予定の2023年1~3月期の実質GDPのうち、実質個人消費の2カ月分が既に分かっているので、仮に実質個人消費の3月を前月比横ばいと置くと、2023年1~3月期の実質個人消費は前期比年率プラス4.5%程度となる。

ここに実質個人消費のシェアである約0.7を掛けてみると、実質個人消費が実質GDPを押しあげる前期比年率寄与度はプラス3.2%程度と計算できる。2023年1~3月期の実質GDPでは個人消費は意外にしっかりした伸び率になり、実質GDP成長率のプラスに寄与しそうなことが分かる。

個人消費の前期比は僅かな増加にとどまるか

逆に、日本では2023年はコロナ感染の一服で、旅行など外出が増え、個人消費は底堅いという見方が多かったが、1~3月期GDPで実質個人消費はもたつきそうだ。日本には米国のように3カ月分を足して3で割ると四半期ベースのGDPの個人消費(民間最終消費支出)にピタリと重なる統計はないが、かなり近い数字になるものがいくつかある。

【図表】GDP統計の実質民間最終消費支出・水準(季節調整値)と前期比年率の推移
GDP統計の実質民間最終消費支出・水準(季節調整値)と前期比年率の推移
出所:内閣府
※2023年1~3月期は筆者予測値

まず、総務省の総消費動向指数が挙げられる。これは民間最終消費支出から対家計民間非営利団体最終消費支出を引いた家計最終消費支出(個人消費全体の約97%)の推移を、様々な月次データによる時系列回帰モデルによって推測している指標だ。2023年1~2月平均の対2022年10~12月平均比は0.0%にとどまっている。

また、財とサービスに関する各種の販売・供給統計の月次データから算出している日銀の実質消費活動指数もある。インバウンドの動きを調整した実質消費活動指数(旅行収支調整済)が役に立つ。2023年1~2月平均の対2022年10~12月平均比はプラス0.1%、年率換算するとプラス0.3%である。どちらの指標からも2023年1~3月期の実質GDPでは6割弱のウエイトの個人消費は3月がある程度の前月比増加となっても、1~3月期は僅かな増加にとどまる可能性が大きく、実質GDPに与える影響度は小さいと言えそうだ。

マクロの消費動向を総合的に捉える指標の先駆けとしては、内閣府が「月例経済報告」の個人消費(家計最終消費支出)の総合的な基調判断材料として作成してきた消費総合指数があったが、最近の他の統計作成機関からマクロの消費動向を総合的に捉える指標が開発されるなど環境が大きく変化した状況を踏まえ、消費総合指数の公表は、2023 年3月6日の2022年12月推計値をもって終了となった。

なお、エコノミストのコンセンサス調査であるESPフォーキャスト調査の4月調査を見ると、2023年1~3月期の実質個人消費の予測総平均は前期比プラス0.43%、低いほうの8人の平均は前期比プラス0.19%、一方、高いほうの8人の平均は前期比プラス0.74%である。2022年1~3月期の実質GDP第1次速報値では、個人消費はESPフォーキャスト調査の予測総平均よりは低めの前期比になりそうだ。