長引く低金利環境の中、投資資金の振り向け先に頭を悩ませる機関投資家は少なくない。他方、政治リスクの顕在化などの影響で各資産の値動きの連動性が高まる中、金融市場との価格相関性が低い「保険戦略」に注目が集まっている。今回は、数ある保険リンク証券のうちCATボンド(CatastropheBond:大災害債券)と、クォータ・シェア(比例再保険)に着目した投資戦略を紹介する。
度重なる自然災害を経て問われる保険戦略の“中身”
保険リスクを証券化した保険リンク証券は、保険 会社などが保有する保険金支払いリスクを資本市場に移転するために発行される証券だ。
保険リンク証券の代表的な商品である「CATボンド」を例に仕組みを見ていこう。CATボンドは、地震やハリケーンなどの大規模自然災害による損失をヘッジしたい保険会社などが特別目的会社(SPC)を通じて発行する債券だ。投資家サイドから見ると、償還期日までにCATボンドが対象とする災害が起こらなければ、元本の保証に加え、高いクーポン(保険料)を受け取ることができる。一方、期中に契約内容に含まれる災害が発生すれば、CATボンドの発行体企業に保険金が支払われるため、投資家サイドの元本は毀損(きそん)する仕組みとなっている。そのほか、保険リンク証券には、「インダストリー・ロス・ワランティ(ILW)」、「担保付再保険」「クォータ・シェア」などの種類がある(図表)。
保険リンク証券は、リターンの源泉が災害発生リスクに対する対価という性質上、各国の政治・経済の状況や、株式・債券などの伝統資産と相関が低い特徴を持つ。東京海上アセットマネジメント 債券運用部 部長の秦正英氏は、「足元、政治リスクにより伝統資産の値動きが不安定化する中、金融市場との相関が低い保険リンク証券を対象とした投資戦略の魅力度は高まっている」と語る。
また、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント クライアントサービス第二部 金融法人グループ営業部長/グループリーダーの井上武宣氏は、「株式や債券投資の場合、仮に米国で金融危機などが起これば、連鎖的に関連地域の市場は影響を受ける。対して、保険リンク証券投資の場合は、特定地域に発生した災害の影響が、異なる地域の災害を対象とした資産に影響を及ぼすことはない。他の市場や資産の値動きの影響を受けにくい特徴がある」と話す。
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