換金性を犠牲にする代わりに高い利回りが期待できるプライベート資産は、ここ数年、機関投資家の安定運用の“最後の砦”として活況を呈してきた。ただし激動の2022年を転機に、そのトレンドにも変化の兆しが見え始めている。2023年以降のプライベート資産投資のポイントはどこにあるのか、有識者に話を聞いた。
パフォーマンスは調整に向かうも
長期的に見れば投資魅力は健在
プレキン リサーチインサイツ シニアリサーチアナリストのアンジェラ ライ氏は、プライベートエクイティ(PE)市場の動向をうかがう“風見鶏” として、バイアウトやIPO(新規株式公開)などの「エグジット(出口)環境」を注視している。
「2021年を振り返れば、大規模な金融緩和などで企業活動が活発化したり金融市場へ十二分な流動性が提供されたりした影響で、PE市場において記録的なエグジットがあった。つまり、それだけ投資家の元に資金が戻ったということだ。それは再投資を通じて新たなPEファンドの資金調達を活発化させ、さらにPE市場に資金が流入する好循環を生んだ。PEのバリュエーションは上昇基調だった」(ライ氏)。
2021年は、伝統的資産・プライベート市場がともに活況を呈した。だが翌2022年初から状況は一転、ウクライナ危機の勃発などもあり、厳しく不確実性の高い運用環境が継続している。そんな中、PEの風見鶏も向きを変え始めている(図表)。
「2022年はインフレ対応で各国中央銀行が金利を引き上げ、資本市場の流動性や企業の利益率が圧縮された影響で、エグジット環境が悪化。今後しばらく、2021年のような活況は期待できないだろう。こうした状況は、PEだけでなくプライベート資産全般にわたって言える」(ライ氏)
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