異常な低金利が世界に広がるなか、日銀のマイナス金利政策によって機関投資家の運用環境が一段と厳しさを増している。日本の機関投資家より前にマイナス金利政策の洗礼を受けた欧州機関投資家は、どのような手を打ったのか。マイナス金利政策導入後の欧州機関投資家の動向に迫る。(工藤晋也)
深刻度が大きい金融法人、低金利=低リスクの前提崩れる
2014年6月、主要国の中央銀行として初めてECB(欧州中央銀行)がマイナス金利政策を導入した。以後、2014年12月にスイス、2015年2月にスウェーデンなどが追随していく。スイスでは、2015年1月に長期金利の指標となる10年物国債がマイナス圏に沈んだ。ところが、ユーロ(欧州)圏では事情が異なる。ドイツの10年物国債の金利が初のマイナスになったのは、マイナス金利導入から2年後の2016年6月だった。
これは2016年3月に10年物国債がマイナスになった日本より遅いタイミングである。「ドイツなどではマイナス金利が新しい現実としてようやく受け入れられ始めたばかりで、その影響も保有資産全体にはまだ及んでいない。むしろ最近までは金利の低下で債券運用が好調に推移していたぐらいだ」とBNPパリバ インベストメント・パートナーズ傘下の資産運用会社THEAMで債券運用責任者を務めるオリヴィエ・ラプレニー氏は解説する。
運用スタンスもマイナス金利政策を受けて劇的に変わったわけではないようだ。債券比率が減少し、代わってオルタナティブ資産の比率が増しているが、この傾向はECBなどがマイナス金利政策に踏み切る以前から見られる(図表)。「欧州の機関投資家は、プラスマイナスを問わず歴史的な低金利環境への対応として、すでに運用戦略の見直しに着手している」とマーサー・ジャパンの今井俊夫氏は明かす。
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