中国経済 変化への適応力が問われる巳年に注目すべきテーマ
より積極的な財政政策を推進

大中華圏担当 チーフエコノミスト
ジン・リュー
巳年が始まり、私たちはこの蛇という干支が象徴する適応力と英知を活かし、変化を受け入れ、自信を持って先行きの見えない世界を乗り切っていくことが必要だ。世界的に不確実な要素が多くなる可能性が高い2025年は、そのような心構えが必要となるだろう。
特に懸念されるのは、米国の新政権下で貿易制限的政策が実施される可能性である。想定される関税の導入を背景に、世界貿易の成長率は2024年の2.8%から2025年は1.9%に鈍化するとみられている。中国としては、潜在的な外部要因による足かせに対抗するために、国内の政策対応を強化する可能性が高い。当社は、中国の経済成長は2024年の5%成長から、2025年は4.5%に減速すると予想している。
米国の新たな貿易政策は、中国経済の成長の重しとなり、貿易のフローの再編が加速する可能性がある。そのような政策が実施されれば、中国の米国への輸出は減少する可能性が高い。そして、最終的な関税のかたちによっては、仲介国で製品を組み立てるというこれまでの戦略は、もはや商業的に理にかなったものではなくなるかもしれない。よって、中国のODI(対外直接投資)が加速する可能性がある。これは近年顕著になってきた傾向だ。

出所:CEIC、HSBC
しかし、トランプ米大統領の1期目の任期において、ODIの主な目的は生産の一部をASEAN(東南アジア諸国連合)などの他の市場に移すことで貿易構造の再編を促進することであった。しかし今回は、サプライチェーンを最終消費者の近くに移動させる代替戦略として機能する可能性がある。
中国政府は消費と投資を後押しするために、財政赤字目標を対GDP(国内総生産)比4%に引き上げ、特別国債発行額を過去最大に増額することで、より積極的な財政政策を推し進めると考える。金融緩和については「適度に緩和的」という方針が政府により示されているが、中国人民銀行は為替レートを相対的に安定させるという目標とのバランスも考慮しなければならない。
したがって、積極的な金融緩和には依然としていくつかの制約があるかもしれないが、預金準備率の50bp(ベーシスポイント)引き下げによる流動性注入、主要政策金利引き下げ(30bp)、流通市場からの資産買い入れを含めた緩和策が実施されると予想する。
2025年末までにデフレから脱却
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