4月景気動向指数・速報値の基調判断は「足踏み」継続

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

内閣府が発表する景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われている。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も踏まえ行われる。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方もしくは下方)」「悪化」「下げ止まり」の5つである。

2023年6月7日発表の4月の景気動向指数・速報値の基調判断は、5カ月連続で、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」になった。

最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、2021年9月~2022年2月速報値では「足踏みを示している」の判断が継続した。しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった2022年2月改定値で「改善」に戻り、3~11月分でも「改善」の判断が継続となった。

2022年12月で当時の3カ月後方移動平均・前月差・2カ月の累計が1標準偏差のマイナス1.00以上のマイナス幅になり、前月差が下降だったため、「3カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件を満たし、「足踏み」に下方修正された。その後2023年4月まで「足踏み」が続いている。

【図表】景気動向指数の推移(先行CI・一致CI)
【図表】景気動向指数:先行CI・一致CI
出所:内閣府

4月の一致CIは前月差プラス0.2の上昇だった。7カ月後方移動平均・前月差はマイナス0.09で4カ月連続マイナスになったが、そのマイナス幅は3カ月累積でもマイナス0.32で、1標準偏差のマイナス0.77以上のマイナス幅の半分以下だ。

事後的に判断される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるための「7カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は、両方とも満たさなかった。

一方、4月の3カ月後方移動平均の前月差はプラス0.86の上昇となり、7カ月ぶりにプラスに転じた。

一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・4月速報値・前月比はマイナス0.4%で前月差寄与度マイナス0.06ポイントだったが、他にマイナスになったのは、商業販売額指数(小売業)、商業販売額指数(卸売業)の2系列だった。速報値からデータが利用可能な8系列の残り5系列は、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の4系列が前月差寄与度プラス、鉱工業生産財出荷指数が前月差寄与度ゼロだった。

4月の先行CIは前月差プラス0.7で、2カ月ぶりの上昇となった。

一致DIは3月が速報値から改定値にかけて大幅上方修正。4月と併せ2カ月連続50%超に

4月の一致DIは68.8%と2カ月連続で景気判断の分岐点の50%を上回った。データが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列がプラス符号、商業販売額指数・小売業1系列が保合い、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の2系列がマイナス符号である。

なお、3月の一致DIは速報値では31.3%だったが、改定値で55.6%と50%超に転じていた。これだけの大幅上方修正は極めて珍しい現象だった。労働投入量指数がプラス符号で新たに加わったが、そのほかに生産指数(鉱工業)と鉱工業用生産財出荷指数の2系列が上方修正され3カ月前と比べ0.1ポイントの差と極めて小幅だがプラス符号に転じたためだ。4月速報値段階で新たに営業利益のプラスが加わり60.0%になった。

4月の先行DIは66.7%で景気判断の分岐点の50%を3カ月連続上回った。昔のようにDIで判断すると、先行きの景気が明るいことを示唆する結果である。

次回の7月7日発表5月の景気動向指数の基調判断も「足踏み」継続

次回5月でも景気の基調判断は「足踏み」になる可能性が大きいと思われる。「下方への局面変化」に下方修正されるためには、過去の数字が不変ならば一致CIの前月差がマイナス3.5以上の幅での大幅下降になることが必要で、そうではない場合は、7カ月後方移動平均の下落幅の3カ月累計が1標準偏差マイナス0.77に届かずに「足踏み」継続になる。

一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると5月分は前月比プラス1.9%上昇の見込みだ。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、5月分の前月比は先行き試算値最頻値でマイナス2.6%の下降になる見込みだ。他の系列もあるので、一致CIのマイナス3.5という大幅な下降は回避される可能性が大きいと思われる。

一方、「改善」に戻るとしてもその時期は2023年後半になる。4月でプラスに転じた3カ月後方移動平均の前月差は、5月は一致CIが前月差マイナス0.2程度以上になれば2カ月連続してプラスになる可能性が大きい。しかし3カ月連続でプラスになることが必要なため、早くても「改善」に戻る時期は6月の景気動向指数が発表される8月7日になってしまう。

また、万一、3カ月後方移動平均の前月差が5月にプラスにならなかった場合は、6月から3カ月かけて、3カ月後方移動平均の前月差の3カ月連続を達成しなければならず、「改善」に戻るのは8月分が発表される10月上旬以降ということになる。