9月景気動向指数・速報値で、一致CIは2カ月ぶり+1.7上昇

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

9月速報値の一致CIは前月差+1.7と2カ月ぶり上昇となった。一致CIの採用系列である鉱工業生産指数・9月速報値・前月比は+1.4%と2 カ月ぶりの上昇だった。また、9月の先行CIは前月差+2.8程度とこちらも2カ月ぶりの上昇になった。

景気動向指数:先行CI・一致CI
景気動向指数:先行CI・一致CI
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出所:内閣府

一致CIを使った景気局面の機械的判断で、9月は「下げ止まり」

景気動向指数は2008年からCI中心の公表に変更され、その時から、一致CIを使った景気局面判断が行われている。一致CI&不規則変動を除去するために3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の、前月差の符号&過去3カ月間までの前月差の累積を組み合わせて判断する。恣意性が入らない機械的判断である。直近11月8日に公表された9月の景気判断は5カ月連続「下げ止まり」である。

景気局面は、①景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」、②景気拡張の動きが足踏み状態になってい る可能性が高いことを示す「足踏み」、③事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを 示す「局面変化(上方への)」と、事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを 示す「局面変化下方への)」、④景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」、⑤景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す「下げ止まり」に分類される。

これまでの推移では、「改善(13年7月)→足踏み(14年4月)→下方への局面変化(14年8月)→改善(14年12月)→足踏み(15年5月)」となった14年4月の消費税引き上げ時のように多少の振れが出ることはあるが、「下方への局面変化」→「悪化」→「下げ止まり」→「上方への局面変化」→「改善」→「足踏み」→「下方への局面変化」という基本的な流れが確認できる。

24年の基調判断は、自動車不正問題により攪乱された動きに

2024年の基調判断では2月速報値で自動車不正問題により生産関連データが一時的に大幅悪化し「足踏み」から「下方への局面変化」に転じた。「悪化」にはならずに踏みとどまっていたが、5月速報値で生産関連データの大幅な反動増により「悪化」を経ずに「下げ止まり」になり、9月速報値まで5カ月連続で「下げ止まり」になっている。

今年の「月例経済報告」での景気判断は10月まで、注釈がつくものの「緩やかに回復している」だ。一方、景気動向指数では景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す「下げ止まり」に上方修正という報道がなされ、「これまで景気後退局面だったのか?」と違和感を覚えた人もいたかもしれないが、やっと正常な判断に戻りそうだ。

12月6日公表10月速報値で「上方への局面変化」になる可能性大

10月製造工業生産予測指数は前月比+8.3%の大幅増で、経産省の先行き試算値最頻値は同+5.1%、90%の確率に収まる範囲は+3.6%~+6.6%と、かなりしっかりした数字になる見込みだ。他の採用系列の動向にもよるが、好調な見通しの数字をみると、12月6日公表の10月速報値で一致 CI 前月差が+0.6以上になる可能性が大きい状況だ。+0.6になると、7カ月後方移動平均(前月差)の3カ月の累積プラス幅が+0.89と1標準偏差分(+0.88)以上になり、かつ当月の前月差の符号がプラスになる。機械的判断は「上方への局面変化」になる条件を満たす。

11月20日に発表された10月の輸出数量指数が前月比▲1.6%になったことから、可能性は小さくなったとみられるが、10月速報値の一致CIが+1.6以上の上昇だった場合は、11月の一致CIが+0.1でもプラスになるかどうかが注目される。過去の数字が変わらないとすると、新年1月10日の11月速報値で一致CI前月差が上昇かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇すれば、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になるという明るい話題が出る可能性もあるからだ。

景気動向指数 ・一致CIの推移と先行き試算 
景気動向指数 ・一致CIの推移と先行き試算 
出所:内閣府データに筆者加筆