キャリートレードで新たな高みを目指すドル円相場 為替動向のカギを握る中国政府の政策転換。資産バブル崩壊なら急落に近いドル安・円高か
2023年2月以降、米国における景気・インフレと、金融政策に関する金融市場の見通しの上方修正が広まったことが、ドル円相場が反発する契機になっている。その上方修正の背景には、中国の大きな存在感が透ける。ゼロコロナ政策からの方向転換を進める中国政府の動向は、今後の為替相場を見通す上で見逃せないポイントだろう。(記事内容は2023年3月2日時点)
米早期利上げ終了予想が後退し再開したドル高
ドルは、日本円、英ポンド、ユーロに対して、2022年9月終わりから同年10月中旬までに、それぞれ 同年9月1日比で7 . 1%、7 . 8%、3 . 5%まで上昇した。
ところが、同年11月に入ると様相が一変する。同月10日に発表された10月の米国CPI(消費者物価指数)が、前年比7.7%と、事前の市場予想(7.9%)を下回った。また、同月14日には、Fed(米連邦準備制度)のブレイナード副議長が、利上げ幅縮小を示唆する。これらが、ネガティブ・サプライズとなり、ドルは、それ以降、下落傾向をたどることになる。
米国のCPIは、2022年11月同7.1%、12月同6.5%と下落傾向をたどり、Fedの利上げ幅も、それまでの0.75%から。2022年12月には0.5%、2023年2月には0.25%に縮小した。ドル円相場は、2023年1月13日に同マイナス8.6%まで下落した。これには、2022年12月20日に、日本銀行がYCC(イールドカーブ・コントロール)の上限を、それまでの0.25%から0.5%へ引き上げた予想外の緩和修正が大きく寄与している。
ドル/ポンドは、2022年12月14日に同マイナス7.0%まで下落した。しかし、翌15日には、BOE(イングランド銀行)が、同年11月にいったん0.75%に拡大した利上げ幅を0.5%に縮小、英国のコアCPI(食品・エネルギーを除く)は、同年10月の同6.5%をピークに2023年1月には5.8%まで下落した。このため、ドル/ポンドは、2022年12月中旬以降、レンジ・バウンドの動きをみせている。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。