年金資産運用・基礎の基礎 【オルタナティブ編 第4回】プライベート・アセット投資なぜ急速に拡大?〜流動性の懸念あるものの、伝統的資産との分散効果が魅力
企業年金のオルタナティブ運用の世界で今、プライベート・アセットへの投資が急速に広がっていると感じます。これまで「主役」だったヘッジファンドの座を奪っているようです。なぜ、ここまでプライベート・アセット投資が広がったのか。懸念材料や留意する点はないのか。今回もラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、これらの点を伺っていきたいと思います。
実物資産と有価証券が投資対象
プライベート・アセットの種類や内容について教えてください。
金武 はじめに定義からお話ししましょう。
プライベート・アセット(以下、PA)とは、株式や債券などの伝統的資産に代表されるパブリック・アセットの対義語になります。パブリック・アセットは、上場市場など公開(パブリック)された市場での取引が可能な資産です。それに対してPAは未公開(プライベート)での取引で、そのため流動性が低いということになります。
具体的なPAについて見てみましょう。PAは非常に多岐にわたりますので、ここでは代表的な投資対象について、その概観を見ていくことにします。
図表1をご覧ください。PAは実物資産と有価証券に分けることができます。実物資産として代表的なものには、不動産やインフラストラクチャー(以下、インフラ)があります。ただし、最終的な投資対象が不動産やインフラであっても、不動産投資信託やインフラ企業株式など、有価証券を介して投資する場合もあります。
有価証券として代表的なものには、未上場株であるプライベート・エクイティや、未上場企業などに対する債権であるプライベート・デットがあります。実物資産にも、プライベート・デットと同じように実物資産取得のための融資である債権(不動産デット、インフラ・デット)があります。
実物は不動産とインフラ
投資の対象はかなり広範ですね。まず実物資産から詳しく説明いただけますか。
金武 そうですね。不動産やインフラの投資戦略について見ていきましょう。
図表2を見てください。不動産やインフラの場合、賃貸料や使用料などのインカム収益を狙うような戦略から、資産価値を高めてキャピタル収益(値上がり益)を狙う戦略まで、異なった収益源泉に応じた戦略が存在します。
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