投資家からの問い合わせ急増。欧州発の「金融システム不安」は気にすべきか。
クレディ・スイス(以下CS)のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のワイド化や株価の下落が続いている。これを踏まえ、投資家から金融システム不安についての問い合わせが増えている。
欧米では金利上昇が急速過ぎたこともあり、インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーションリスクが現実味を帯びている中、金融システム不安を生じさせることなど、金融機関当局として受け入れられるはずもない。このあたりを整理しておくこととする。
図表1は欧州の主な金融機関のCDSの推移だ。
CSのスプレッドは大きくワイド化した後、一旦タイト化を始めたものの、再びワイド化したことが見て取れよう。これはCSに対し何らかのリスクをマーケットが読み取ったことに他ならないのだが、問題はこの正確な理由がはっきりしないことだ。
SNSで炎上したからとか、ファンド投資のうちアルケゴスやグリーンシルの損失が問題であったからなどと言われるが、前者はまったく不明であるのに加え、後者もいつの出来事に反応しているのか、ということになる。
アルケゴスの話題がマーケットを震撼させたのは2021年3月から4月のことだし、グリーンシルが破綻したのも2021年3月である。訴訟リスクの調整が長引くとは言われていたが、それにしてもこれが理由で突如スプレッドがワイド化したとすれば、ピント外れに見える。
当面の金融システム不安リスクは限定的
何か、我々が見ることが出来ない問題があるのだろうか、と穿って考えることは可能だ。例えば、他のファンドの資産凍結が実は起こっているのではないか、欧州金融機関にありがちな船舶ファイナンスなどの損失が出ている、実はロシア向けエクスポージャーが問題になっていると言ったような可能性である。しかし、いずれも仮説の域を出ない。その上、現時点で金融システム不安が欧州で生じないだろうと考えられる理由が2つある。
第一に、金融システム不安への対応、処理の方法が分かっていることだ。金融システムに問題が起こった時にやるべきことは、過去の歴史から我々の理解が進んでいる。まず、問題のある場所を特定し、それを除外すること。
そして、そのために出た損失を賄えるか、減少した資本分を補填できるか。ここまでやれば、当該問題は処理されるため、止血が終わる。その後収益が得られるように回復できるかは、集中と選択でどういうビジネスラインを選ぶかや、リストラによるコストカットが効くかどうかで見えてくる、という流れだ。
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