統合報告書において、ESG情報の開示にページを割く企業が増加している。投資家ならびにESG評価機関は、企業のESG情報をどのような視点で評価しているのだろうか。『J-MONEY』を発行するエディトと、企業IR(投資家向け広報)などを支援するエフビーアイ・コミュニケーションズを中心に組織されたIntegration Summitは2018年10月24日、東京で「第3回統合報告セミナー~ステークホルダーから評価される統合報告とは~」を開催した。当日の模様を紹介する。

講演① 統合報告におけるSDGsと自社のESGの関係性

経営陣のコミットを通し企業価値への寄与を見える化

非財務情報と財務情報を結びつけ、統合的思考により価値創出の源泉の見極めを

野間 幹晴氏
一橋大学大学院 経営管理研究科
金融戦略・経営財務プログラム
准教授
野間 幹晴

2006年に国連が提唱した「責任投資原則」により、世界中の機関投資家の間でESG投資に対する意識が高まっている。日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を含む62の機関が署名しており、投資対象の企業に対しESGについての情報開示を求めるなどの動きが広まっている。

企業もSDGsやESGへの取り組みを強化しているなかで、投資家から課題として指摘されるのが、統合報告においてESG活動が財務的な成果と結びついていない点だ。投資対象としての企業にESGが求められているのは確かだが、ESGに注力していない企業やインデックスよりも価値をうまなければ、投資価値はないと判断されてしまう。このため統合報告書では、ESGなどの非財務情報を開示するだけでなく、それがどのように本業に影響を与え、企業価値に寄与しているかの見える化、すなわち非財務情報の財務化が重要だ。

非財務情報と企業価値との関連が不明確であれば、統合報告の有用性が低下する。つまり、見えにくい「稼ぐ力」の「見える化」が重要だ。価値を創出しているにもかかわらず、統合的思考が欠けているために、暗黙知に留まっているケースが多い。陰徳を積むだけでは不十分で、開示しなければ評価されない。

経営陣も積極的に統合報告書の作成にコミットし、価値創出や競争優位の源泉について統合的思考によって再考する必要があるだろう。

講演② MSCIの評価ポイント~ESGと企業パフォーマンス~

ESG格付けレポートを企業に送付しフィードバックをリサーチに反映

高リスク・エクスポージャーには相応のリスク管理が求められる

柴野 幸恵氏
MSCI
ESGリサーチ シニア・アソシエイト
柴野 幸恵

当社はグローバル全体で185名以上アナリストが在籍し、セールスやコミュニケーション部門のスタッフを含め300名超体制でESGビジネスに携わる。MSCIのESG格付けは、投資家がESGリスクと投資機会の双方を理解し、ESG要素をポートフォリオ構築や管理プロセスに統合するサポートをする。ESG格付けモデルは、環境・評価・ガバナンスの3要素を統合し、AAA~CCCまでの7段階で評価する。年に1度、開示情報に基づいて産業内の競合他社と比較しスコアを算出。格付け対象は約6000銘柄で、うち700銘柄強が日本企業だ。

各産業において重要とされるESG課題は、該当する産業や企業にとって重要な「キーイシュー」と特定され評価対象となる。キーイシューは業種ごとに選定され、リスク・エクスポージャーとリスク管理能力の2軸で測定する。リスク・エクスポージャーは0~10のスケールで表示され、数字が高ければ高いほど高リスクとなる。

ガバナンススコアは、取締役会の構成など96個の指標に基づき、グローバルの評価基準に達していない場合は10点満点から減点されていく。不祥事スコアも0~10のスケールで表示され、例えば、いち担当者が引き起こした不祥事よりも経営陣が関与するほうが構造的問題と見なされ、スコアが低くなる。当社は企業とのコミュニケーションプロセスとして、インダストリー格付け更新分析開始前にその時点で最新のESG格付けのレポートを企業に送付する。企業からのフィードバックを受ければ、内容によって適宜リサーチに追加情報を反映させていく方針だ。

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