プロフェッショナルに聞く! 不動産投資の潮流【第4回・PGIMリアルエステート・ジャパン】 構造変化を受けて「非伝統的セクター」への関心が高まる
年金基金をはじめとした機関投資家のオルタナティブ運用において、安定したリターンの源泉として注目度を増す不動産投資は、新型コロナウイルス禍で下落した株式などの代替資産として、安定運用に欠かせない存在になりつつある。不動産投資の現状や展望、可能性について有識者に聞く連載「プロフェッショナルに聞く!不動産投資の潮流」。第4回では、PGIMリアルエステート・ジャパンの川瀬千枝氏に、不動産の非伝統的セクターについて話を伺った。
非伝統的セクターは短期的な景気動向の影響を受けにくい
新型コロナウイルス禍やデジタル化、高齢化など、社会の構造的な変化が次々と進展している。こうした変化の激しい運用環境の下で、これまで不動産投資の主要投資先であった「住居」「オフィス」「商業」「物流」のいわゆる“4大物件セクター”を見直し、魅力的な投資機会を模索する動きが拡大している。
「例えば、これまで『ライフサイエンス』は『オフィス』セクターに分類されてきた。しかしながら、景気変動の影響を受けやすく、新型コロナウイルス禍で在宅勤務が進んだことでパフォーマンスが低調となった伝統的なオフィスと、重要度が高まり堅調な拡大を続けるヘルスケア系のライフサイエンス関連物件を分けて捉える見方が出てきている」
足元の動きについてこう説明するのは、PGIMリアルエステート・ジャパン マーケティング・グループ ヴァイス・プレジデントの川瀬千枝氏だ。このように、足元の市場環境で投資家からの関心を集めている新たな不動産セクターが「非伝統的」セクターと呼ばれている。
不動産投資家にとってチャンスの宝庫となる同セクター。これまで注目されてこなかった対象が多く含まれるためイメージしづらいかもしれないが、一例としては、データセンターや新薬の開発・研究施設などのライフサイエンス関連施設、日本でも多く見かけるようになったセルフストレージ(個人用倉庫)などが挙げられる。
「米国では、不動産のコア型オープンエンドファンドのベンチマークであるODCE(Open End Diversified Core Equity)において、現在セルフストレージ以外は非伝統的セクターという分類がない。そのほかの非伝統的物件については、各運用会社の判断で4大物件セクターや『その他』に含めている。ただし2022年後半以降は4大物件セクタープラス『非伝統的』セクターとする予定でおり、投資家もファンド運用会社も注視している」(川瀬氏)
「非伝統的」セクターの特徴は、パフォーマンスが景気などの短期的な動向の影響を受けにくい物件が多い点だ。人口動態など構造的要因を成長の追い風として堅実な成長が見込める可能性が高い。
例えば、米国の住居セクターから派生したマニュファクチャードハウジングは、工場で製造(マニュファクチャー)した住宅を、借りた土地の上に設置する。アクティブアダルトと呼ばれる55歳より上の年齢層向けのマニュファクチャード・ハウジングもあり、米国では子供が独立し、家のメンテナンスが困難になったり、退職後に快適な気候の土地で過ごしたいという理由があったりすることなどから、55歳以上限定のコミュニティ向け物件が人気だ。
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