大企業・業況判断DI。製造業が悪化、非製造業が改善だった前回調査

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

2022年10月3日にマーケットが注目する重要国内経済指標である日銀短観9月調査が発表される。マーケットが最も注目するのは、業況判断DI(ディフュージョン・インデックス)がどうなるかだ。

業況判断DIは「良い」、「さほど良くない」、「悪い」という3つの選択肢の中から1つを回答してもらい、「良い」の回答社数構成比から「悪い」の構成比を引いて算出する。プラスのDIは「良い」超であることを意味する。「良い」・「悪い」という水準を質問していて、「良くなる」・「悪くなる」という方向性を質問していない点が、ほかの景況感に関する調査とは異なる。

ここで、前回の2022年6月調査を振り返っておこう。大企業・製造業の業況判断DIプラス9は3月調査の「先行き」見通しプラス9と同じで、事前の予想通り、3月調査のプラス14から5ポイント景況感は悪化した。

一方、大企業・非製造業・業況判断DIでは、2022年3月調査から4ポイント改善しプラス13になった。製造業が悪化、非製造業が改善と対照的な動きになった。前回3月調査の「先行き」見通しプラス7を6ポイント上回り、事前の予想を上回って、足元の景況感が改善したことを意味する。2022年3月21日まで発令されていた、まん延防止等重点措置が解除されたことがプラスに働いたとみられる。

日銀短観とロイター短観(400社ベース)、QUICK短観。大企業の業況判断DI比較
■製造業
製造業のDI
■非製造業
非製造業のDI
出所:日本銀行、トムソン・ロイター、QUICK
※2022年9月調査の日銀短観の数字は、筆者予測値
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2022年6月調査から微増だった9月QUICK短観、ロイター短観の製造業DI

QUICK短観、ロイター短観は、月次で企業の業況判断を方向性ではなく、水準について調査している。日銀短観対象企業の一部に対する類似調査なので、日銀短観の予測に役立つ。2022年9月13日に発表されたQUICK短観9月調査の調査期間は同年8月30日から9月8日である。

製造業の業況判断DIは6月調査のプラス18から僅かに1ポイント上昇しプラス19となった。また、非製造業の業況判断DIは6月調査のプラス31から10ポイント低下のプラス21となった。

9月14日に発表されたロイター短観9月調査の調査期間は8月31日から9月9日である。9月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは6月調査のプラス9から僅かに1ポイント上昇しプラス10になった。また、9月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは6月調査のプラス14と同じプラス14になった。

「先行き見通し」についてみよう。まず、QUICK短観9月調査の製造業の12月までの「先行き見通し」はプラス18で9月実績のプラス19より1ポイント低下の見込み、一方、非製造業の12月までの「先行き見通し」はプラス24で9月実績のプラス21から3ポイント上昇の予想である。

ロイター短観9月調査の12月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースでプラス10と9月実績のプラス10から横這いの見込み、製造業・200社ベースでプラス14と9月実績のプラス14からこちらも横這いの見込みである。

一方、非製造業・400社ベースの12月までの「先行き見通し」はプラス14と、9月実績のプラス11から3ポイント上昇の見込み、非製造業・200社ベースでプラス3と9月実績のプラス9から6ポイント低下になる見込みである。

2022年9月は大企業・製造業・業況判断DI、非製造業DIともプラス10程度を予測

日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(9月調査)やロイター短観(9月調査)などを参考にして、9月調査日銀短観の大企業・業況判断DIを予測した。

9月調査日銀短観ではエネルギー価格・食品価格の高騰や、半導体で在庫調整の動きがあることなどのマイナス材料があるものの、新型コロナの感染対策が行動制限のないものに変わったための需要回復などのプラス材料もある。大企業・製造業の業況判断DIはプラス10程度と6月調査のプラス9から1ポイント程度、僅かに改善すると予測した。

また、大企業・非製造業の業況判断DIはプラス10程度と、こちらは6月調査のプラス13から3ポイント程度低下するとみた。円安によるコスト増での業績押し下げ効果、価格上昇による需要減少、新型コロナ感染者数第7波の影響で、顧客の動向が行動制限されている状況とあまり変わらなかったことなどが背景にあろう。

日銀短観の設備投資計画の予測には、ほかの設備投資計画調査、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DIや、過去の修正パターンなどを参考にした。

ほかの設備投資計画調査を見ると、法人企業景気予測調査の全産業の計画は4~6月期調査では前年度比プラス16.0%だったが7~9月期調査では僅か0.2ポイント上方修正され、プラス16.2%になった。2022年度の大企業・全産業の設備投資は前年度比プラス19.0%程度と予測した。6月調査の同プラス18.6%から増加率が若干高まると予測した。