脱炭素化社会へ向けて「日本」はリーダーになれるか
2022年5月19日のクリーンエネルギー戦略有識者懇談会にて、岸田総理は次のように述べた。「炭素中立型社会へ転換するため、少なくとも今後10年間で、官民協調で150兆円超の脱炭素分野での新たな関連投資を実現」。
そのために、「成長促進と排出抑制をともに最大化する効果を持った、成長志向型カーボンプライシング構想を具体化するなかで、裏付けとなる将来の財源を確保しながら20兆円とも言われている必要な資金をGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債で先行して調達し、速やかに投資支援に回していくことと一体で検討している」(官邸HPより)。
150兆円の規模での投資や、財源を確保してのトランジションボンドの発行など、唐突に見える発表は、脱炭素化社会のリーダーシップを取るとの意思とも感じられる。
しかし、実際のところ、中国やシンガポールなど排出権取引市場などを進めたり、世界各国でタクソノミーが完成したりしていることを考えると、サステナブルファイナンス市場創設に関し、むしろ、日本は遅れを取っているのではないか。現状を鑑み、何が必要か検討しよう。
サステナブルファイナンス市場の拡大に歯止め
2022年のサステナブルファイナンス市場は拡大に歯止めがかかっている(図表1)。2022年4月末現在の市場規模で見ると、前年同期比の規模に未達であることが分かる。
【図表1】サステナブルファイナンス市場発行額
ESG(環境・社会・企業統治)市場における発行量が特に2022年4月に落ち込んでいることも分かる(図表2。これは欧州例だが、米国も同様)。
【図表2】ESG発行量(2021年1月から2022年4月中旬まで)
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