日本におけるESG投資の機運が高まってきた。しかし、ESG投資のパフォーマンスに関する実証研究が乏しいことから、実際に取り組んでいるのは一部の機関投資家にとどまる。日本のESG投資の実情とパフォーマンスとの関係を探った。(工藤晋也)
GPIFのインデックス採用が投資意欲の呼び水に
2017年7月3日、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が3つの日本株のESG投資インデックスの採用を発表した。これを契機に機関投資家のESG投資の意欲が一段と高まったようだ。コムジェスト・アセットマネジメント代表取締役の高橋庸介氏も次のように話す。「(GPIFのESG投資インデックスの採用後は)本腰を入れてESG投資に取り組まなければという意志を感じるようになった」。
NNインベストメント・パートナーズは、顧客のESG投資セミナーなどに講師を派遣しており、同社機関投資家営業部長の南原啓太氏は「最近は回を重ねるごとに参加者が急増している」と振り返る。
JSIF(日本サステナブル投資フォーラム)のアンケート調査によると、日本におけるESG投資などのサステナブル投資(持続可能な投資)残高は、2015年の26兆6872億円から2016年には56兆2566億円と2.1倍に拡大している(図表1)。「2017年のアンケート調査の結果はまだ出てないものの、日本のサステナブル投資残高はさらに伸びていると思う。投資プロセスにESGの要素を取り入れた当社の日本株アクティブファンドのAUM(運用資産残高)も着実に増えている」と三井住友アセットマネジメント スチュワードシップ推進室長の齊藤太氏は手応えを感じている。
ESG投資の拡大傾向は、日本特有の現象ではない。アジア・太平洋地域を中心にESG投資のすそ野が広がっている。BNPパリバセキュリティーズ・サービスの投資分析部門アジア統括責任者であるマドゥー・ガイヤー氏は、2017年8月に行われた機関投資家向けのセミナーのなかで「我々の拠点があるシンガポールでは、1年前まではESGの話をしてもほとんどの人があまり関心を持っていなかったが、いまは話題の中心になっている。今後2年間の予想ESG成長率を見ても、アジア・太平洋地域は23%とその他の地域を上回っている」と解説した(図表2)。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。