フランス大統領選挙の真っ最中である。2022年4月10日のフランス大統領選で、共和国前進候補のマクロン大統領と極右国民連合ルペン党首が決選投票に進むことが決まった。大方の予想通りとなった二人の一騎打ちとなる投票日は2022年4月24日に迫っている。

マクロン氏の再選が濃厚

中空麻奈
BNPパリバ証券
グローバルマーケット統括本部
副会長
チーフクレジットストラテジスト
チーフESGストラテジスト
中空 麻奈

新大統領としてマクロン氏再選が濃厚と言われている。Predictitが算出したマクロン氏再選のインプライド確率は79%と高い。

2022年4月19日に公表された最新世論調査(IPSOS)でも、マクロン氏が56.5%、ルペン氏が43.5%であった。もっとも両者の支持率が近接していた際の差が6ポイントだったのと比較すると、13ポイントまで差は拡大。3位だったメランション氏に投票した人の浮動分がマクロン氏支持に回ったのが直接的な要因だが、加えて、2017年、2021年の地方選挙の際の世論調査など、ルペン氏の支持率が過大評価され気味であったことも勘案すれば尚更だ。

もっとも、マクロン大統領とて盤石とも言えない面がある。ルペン氏はマクロン氏よりも①有権者との対話時間を持ち、②有権者が現時点で重要視している購買力を旗印にしている。さらに、③ルペン氏の選挙運動は減税や補助金の提供により所得や社会給付の減少に対処することに重点を置いているため選挙民に好かれやすい。

また、マクロン氏の失点が大きくなるということもありえる。「マッキンゼーゲート(国によるマッキンゼーへの数多くのプロジェクト発注)」や、軍事諜報局長の解任につながったロシアに関するフランスの諜報力の低さといった問題がそれに当たる。

マクロン大統領とルペン氏の政策綱領

マクロン氏とルペン氏の政策をテーマ別にまとめると図表1、2の通りである。マクロン氏は現職でもあり、ウェイトを重くした原子力政策を含めた気候変動策に力点を置きつつも現実的な政策ラインナップとなっている。

一方のルペン氏は、昇給に給与税を課さない、中間層には相続税を課さない、30歳未満の労働者には個人税を課さない、医療支出を引き上げる、など実現可能性はともかく耳に聞こえのいい政策が並ぶ。また、移民の純流入を減らし社会的支援はフランス国民のみ、という人道的ではないが一定の支持は得られるであろう政策も含めている。

【図表1】マクロン氏政策綱領

経済的テーマ
人的資本
  • 学校や大学の自治を拡大し、成果の透明性を高める
  • 勤務時間の増加と連動して教員の給与を引き上げる
  • 職業訓練校制度を改革し、大学課程を就職への準備としてより優れたものにする
  • 2030年までに退職年齢を62歳から65歳に引き上げ、特別制度を廃止して制度を簡素化する
年金と労働市場
  • 2030年までに退職年齢を62歳から65歳に引き上げ、特別制度を廃止して制度を簡素化する
  • 失業給付の期間と額を失業率に連動させる
  • 最低限の福祉給付を何らかの訓練や仕事と結びつける
  • 職業センター(「Pole emploi」)を改革して国と地方のリリースを集約する
再工業化
  • 70億ユーロの生産税減税(家計向けの70億ユーロの減税も実施)
  • 宇宙産業、医療、原子力などへの300億ユーロの公共投資計画
  • チャンピオン企業やインフラ(クラウド、メタバース、衛星)を構築するためにEUレベルの投資を推進する
そのほかのテーマ
気候変動
  • 新たに原子力発電所6基を建設し、一部のエネルギー企業を国有化する
  • 再生可能エネルギー:2050年までに太陽光発電容量を10倍に増やし、風力発電所を50基建設するほか、グリーン水素に投資する
  • 電力消費量の低減、年間70万戸の住宅リノベーション、電気自動車補助金
  • EUレベルでの炭素国境税の導入
戦略的自律性
  • 共通の防衛ドクトリンを定め、欧州の軍隊を強化し、連携を図る
  • フランスの防衛予算をGDP比2%に維持する
  • 政治的なシェンゲン協定を締結し、欧州対外国境管理協力機関(Frontex)のリソースと行動を拡大する
行政事務の近代化
  • 公共支出を近代化して200億ユーロ削減する(国と地方で半分ずつ)
  • 国際課税の改革と福祉の近代化を通じて150億ユーロの節約を実現する

出所:各種報道資料よりBNPパリバ証券

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