日本の「成熟した債権国」への移行と「ホームバイアス」の解消 ドル安は短命に終わり、ドル円相場は130円に向けて上昇
ドルの過大評価は拡大を続け、2022年1月には過去最高水準を更新した。ドルのオーバーシュートは早晩終了するのではないか。しかし、日本の「成熟した債権国」への移行と「ホームバイアスの解消」、ウクライナ情勢および台湾問題という地政学リスクを背景に、ドル安は短命に終わるとみる。ドル円相場は本年中、130円に向け上昇するだろう。( 記事内容は2022年3月1日時点)
年初来のドル円相場と米国金利デカップリング
2021年11月下旬に、Fed(米連邦準備制度)のパウエル議長による「インフレは一時的」発言の撤回から115円台まで上昇したドル円相場は、南アフリカにおける新型コロナウイルスのオミクロン株の発見を受けて、12月上旬にはリスク回避から112円台までの調整を強いられた。しかし、同月中旬に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)において予想通りテーパリングの前倒しが決定されると、その後、Fed 高官による利上げの前倒し発言が相次ぎ、2022年中における計4回1%の利上げ実施が市場のコンセンサスとなった。これ受けて、ドル円相場は1月上旬に2017年1月以来の116円台まで急伸したが、その後、ドルと米国金利のデカップリングが始まることとなる。
緊迫化するウクライナ情勢は、エネルギー価格の上昇を通じて米国のインフレ見通しをさらに悪化させる一方、為替市場においてはリスク回避の円買いをもたらすこととなった。ドル円相場は、2022年1月中旬に113円台まで下押しした。さらに、1月下旬のFOMC後のパウエル議長による記者会見を契機に、金融市場ではFed の利上げが年4回、1回0.25%を超えて実施されるとの観測が強まった。ドル円相場は、2月上旬に再び116円台を付けたが、その後は失速した。
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