日本初のマイナス金利で利回り低下が加速する国内債券、世界経済の減速懸念や原油安などでボラティリティが高まる国内外株式と、伝統資産が四面楚歌の状態に陥っている。従来型の運用戦略では期待通りの収益が得られにくいなか、どのような選択肢があるのだろうか。(工藤晋也、山岡靖宗)
年限12年の国債もマイナス圏に。不透明な局面向きの手法を選択
奇しくも本誌2016年冬号が発行された2016年1月29日、日銀はマイナス金利政策を導入することを発表した。この報を受けて債券マーケットはすぐさま反応。その日のうちに年限8年までの国債がマイナスに転じた。
以降、国債のマイナス化はじわじわと進む。いまや長期金利の指標となる10年国債だけでなく、年限12年の国債までもがマイナス圏に突入した。「結果、国内債券がもたらすインカムの魅力は薄まり、運用戦略を見直す動きが広がっている。『国内債券に代わる投資先を教えてほしい』といった問い合わせも増えている」と、BFCアセットマネジメント代表取締役会長の川名教之氏はいう。
では、国内債券に代わる投資先は何か。川名氏は「生保一般勘定」「保険リンク証券(キャットボンド)」「株式マーケット・ニュートラル」「債券裁定(レラティブ・バリュー)」を候補に挙げる。
このうち、生保一般勘定は元本と一定の利回りが保証されているとはいえ、低金利による運用難でリターンはおよそ1%。年金基金の2.5%程度の予定利率を達成するには、株式マーケット・ニュートラルなどでリターンを補わなければならない。
地震や台風といった大規模災害の発生に伴う損失リスクを証券化したキャットボンドは、株式や債券といった伝統的資産との相関性の低さが売りだ。「キャットボンドは需要が供給を上回っているため、利回りは多少落ちているが、引き続き機関投資家のニーズは強い。対象の災害や地域が偏っている傾向があるので、対象地域などが分散されたキャットボンドを選ぶことがポイントになる」と川名氏は説く。
「株式マーケット・ニュートラル」は、ロング(買い)とショート(売り)を組み合わせて市場変動の影響を極力減らし、銘柄選定によってアルファ(超過収益)を獲得する手法。一方の「債券レラティブ・バリュー」は、ロングとショートを組み合わせて債券ターム・ストラクチャー、クレジット・スプレッドなどの価格のゆがみを収益源とする手法である。
「いずれの手法も不透明な局面に向く。いかに優れたスキルや廉価なトレーディングコストの運用会社を選ぶかが、高いパフォーマンスのカギとなる」(川名氏)
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