2020年の完全失業率は2.8%程度か

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

戦後2番目の長さの景気拡張局面の下、低下基調にあった完全失業率は2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で上昇に転じてしまったとみられる。

総務省統計局「労働力調査」で完全失業率の長期推移を振り返ってみよう。データがある1953年から1960年までは1%台半ば~2%台で推移していた。1961年~1974年は高度経済成長の恩恵を受けて完全失業率は1%台前半という低水準で安定的に推移した。

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1975年の1.9%が最後の1%台で、その後は2%台で推移し、2度の石油危機を経て1986年・1987年の2.8%まで上昇した。バブル景気で1990年・1991年に2.1%まで低下した後、バブル崩壊、金融危機で2002年の5.4%まで大きく上昇した。戦後最長のいざなみ景気の下で2007年の3.9%までいったん低下したが、リーマンショックで2009年・2010年には5.1%まで上昇した。その後は低下基調に転じ、2018年・2019年には2.4%になった。

新型コロナウイルス感染拡大で2020年は11月までの11カ月間で8月・9月・10月が3%台になったこともあり、1月29日に公表される2020年暦年の完全失業率は2.8%程度になるものと予測される。リーマンショックで2008年、2009年と上昇して以来、11年ぶりの上昇になろう。

景気ウォッチャー調査の雇用関連の現状水準判断DI(ディフュージョン・インデックス。季節調整値)は、2020年の平均は24.7と2019年平均の50.0から大幅低下になっている。

相関係数高い自殺者数も、2020年は新型コロナで増加に

健康問題、家庭問題、勤務問題、男女関係など自殺の理由は様々だが、経済生活問題を理由とした自殺も多い。警察庁「自殺統計」と厚生労働省「人口動態統計」各々の自殺者数と完全失業率の年次データの相関係数をデータが存在する最長期間で計算すると、それぞれ0.904(1978年~2019年)、0.933(1953年~2019年)と高いことがわかる。

【図表】完全失業率と自殺者数

【図表】完全失業率と自殺者数
(出所)総務省、厚生労働省、警察庁

警察庁の自殺者数は、日本における外国人も含む総人口が対象で、自殺死体認知時点で計上する。一方、厚生労働省の自殺者数は、日本における日本人を対象とし、死亡時点で計上する。警察庁データのほうが公表は早い。

まず、厚生労働省のデータで自殺者数の推移をみよう。1953年まで1万人台だったが、1954年から1960年までの7年間は2万人台に乗った。ピークは1958年の2万3641人だ。戦前の価値観を持った人が急激な時代の変化についていかれずに自殺したという説もある。しかし、1964年の東京オリンピックが決まった1959年から減少が始まり、1961年に再び1万人台になった。1964年の自殺者数は1万4707人だった。1963年から大阪万博開催年の1970年までの8年間は1万4000人台か1万5000人台という歴史的な低水準で推移した時代であった。

第一次石油危機が発生し高度経済成長が終了した1973年前後から自殺者数の増加基調が続き、1977年に2万人台に乗った。

1978年以降は、警察庁のデータで自殺者数の推移をみると、1986年をピークにバブル景気の山である1991年まで減少基調で推移した。しかし、バブル崩壊により増加基調に転じ、金融危機の影響が出て1998年に初めて3万人の大台に乗った。その後さらに増加基調が続き、2003年には過去最悪の3万4427人となった。東日本大震災が発生した2011年まで3万人台が続いたため、自殺者数は3万人台というのが当時の常識になってしまった。

2012年には15年ぶりに2万人台に戻った。2019年の2万169人まで、2010年から10年連続減少した。

新型コロナウイルス感染拡大により、2020年は年初から11月暫定値までの累計が1万9225人、前年比は2.9%増加である。2021年1月下旬に警察庁から公表されるとみられる2020年の自殺者数は、完全失業率と同様に11年ぶりに増加に転じるものと予測される。