2021年上半期の完全失業率は2.87%

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

2021年6月の完全失業率は2.9%と5月から0.1ポイント低下した。小数点2位までみると2.93%で、今年に入って6カ月連続で2%台継続となっている。2021年上半期の完全失業率は2.87%である。最も高かったのが5月の2.97%で、最も低かったのが3月の2.63%である。

2020年1月で2.38%だった完全失業率は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で10月には3.12%まで上昇した。2020年上半期(1~6月)の完全失業率は2.57%だったが、下半期(7~12月)は3.00%に上昇した。2021年上半期の完全失業率は前年同期の2020年上半期に比べ0.30ポイント上昇したが、前期比の2020年下半期に比べると0.13ポイント低下した。2021年上半期の完全失業率はコロナ禍では比較的落ち着いていたとみることができるだろう。

7月自殺者数は13カ月ぶり前年比減少

自殺の理由は、健康問題、家庭問題、勤務問題、男女関係など様々だが、経済生活問題が理由となることも多い。警察庁「自殺統計」と厚生労働省「人口動態統計」各々の自殺者数と完全失業率の年次データの相関係数を、データが存在する最長期間で計算すると、それぞれ0.911(1978年~2020年)、0.931(1953年~2020年)と強い相関があることがわかる。

警察庁の自殺者数は、日本における外国人も含む総人口が対象で自殺死体認知時点で計上するのに対し、厚生労働省の自殺者数は、日本における日本人を対象として死亡時点で計上する。なお、警察庁データのほうが公表は早い。

警察庁の自殺者数は、金融危機の影響が出て1998年に初めて3万人の大台に乗った。その後さらに増加基調が続き、2003年には史上最悪の3万4427人となった。東日本大震災が発生した2011年まで3万人台が続いたため、自殺者数は3万人台というのが当時の常識になってしまった。2012年に15年ぶりに2万人台に戻り、2019年の2万169人まで2010年から10年連続減少した。

新型コロナウイルス感染拡大により2020年の自殺者数は2万1081人、前年比はプラス4.5%の増加。完全失業率と同様に11年ぶりに悪化に転じた(図表)。

【図表】完全失業率と自殺者数

図表
※2021年上半期の自殺者は1~6月の合計を年換算するため、倍にしたもの
(出所)総務省、厚生労働省、警察庁

2021年上半期の1カ月平均は1810人だった。前年同期の2020年上半期の同1596人に比べて13.4%の増加であったが、前期の2020年下半期の同1917人に比べマイナス5.6%と減少になっている。完全失業率と同様の動きである。

2021年7月の警察庁の自殺者数速報値は1590人にとどまり、2020年7月の1865人からマイナス14.7%減少した。このままのペースでいけば、2021年下半期の自殺者数は前年同期を下回りそうだ。関連指標の完全失業率も前年同期の3.00%を下回る可能性が大きいだろう。

先行・一致の関連雇用指標も改善基調

完全失業率は景気の遅行指標である。一致指標の有効求人倍率は直近6月で1.13倍と2021年5月の1.09倍から上昇し、2020年5月の1.20倍以来の水準になった。景気の先行指標である新規求人数は6月の前月比がプラス4.9%の増加と、5月の同プラス1.3%に続いて2カ月連続増加になった。景気ウォッチャー調査の雇用関連の現状水準判断DI(ディフュージョンインデックス。季節調整値)は2021年1月分で26.5まで低下した後、2月分に34.7へと反転し、3月分41.0、4月分40.6、5月分38.4、6月分45.2、7月分45.7と上昇傾向で底堅く推移している。

足元の雇用関連指標は、コロナ禍にも関わらず改善傾向にある。景気が製造業中心に何とか拡張局面を維持するなか、給付金、協力金、雇用調整助成金の政策効果がそれなりに出ているようだ。

8月のESPフォーキャスト調査によると完全失業率の予測値平均は、2021年7~9月期が2.91%、10~12月期が2.86%、2022年1~3月期が2.78%、4~6月期が2.73%となっている。

総合的に考えて、新型コロナウイルスの感染拡大が現在に比べ相当ひどくならない限りは、2020年下半期の完全失業率は2.8~2.9%程度で推移する可能性が大きいとみられる。