• トリプルブルーでも米財政赤字は大幅に拡大
  • 期待インフレ率の上昇が米長期金利を押し上げ
  • 実質短期金利の観点からドルには多大な下落余地
  • ドル円相場は年末までに90円を目指す
梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

回避された米政治のねじれ

すでに報じられている通り、2021年1月5日にジョージア州で行われた決戦投票の結果、連邦議会上院においても民主党が多数派となった。この結果、筆者が前提としていた議会のねじれによって、増税案が否決され米財政赤字の拡大テンポが一段と加速するというストーリーは崩れた。しかし、バイデン政権の極めて拡張的な財政政策によって、財政赤字が拡大しドルが下落するという筆者のメインシナリオに変更はない。同14日に発表された1.9兆ドルの景気対策に加えて、同政権は2月に経済再建策を表明するだろう。

トリプルブルーがバイデノミクスを実現

一方、債券市場では、民主党が大統領と上下院を制するトリプルブルーが現実のものとなったため、景気浮揚策の実現可能性が高まり、米長期金利が急騰した。先週の10年物米国債利回りは、1.15%と年初来22ポイントの上昇となった。これを受けて、ユーロドル相場は1.2075ドル、ドル円相場も104円40銭近辺までドルが上昇した。

米長期金利上昇によるドル高は短命

再考ESG投資

この結果、外為市場では、米長期金利の上昇によってドルが反発するという使い古されたシナリオが復活しつつある。しかし、筆者は今回の米長期金利とドルのポジティブ・コルレーションは短命に終わるとみている。

購買力平価仮説によるドル安

ここで注目すべきは、今回の米金利の上昇は期待インフレ率の上昇によってもたらされたことではある。経済学が教えるところによれば、そもそも期待インフレ率の上昇は購買力平価仮説の観点からドル安を招く。さらに、それは実質金利の低下という経路を通じてもドルの下落を招来する。

急騰した期待インフレ率

10年物国債利回りから物価連動債利回りを差し引いた米国の期待インフレ率は、2021年1月4~14日の平均で2.06%と、2020年12月中の平均1.91%から0.15ポイントの上昇幅を記録した。同期間の10年物国債利回りの上昇幅も0.15ポイントであるから、そのすべてが期待インフレ率の上昇によってもたらされている。すなわち、実質長期金利は、まったく上昇していない。

実質短期金利下落がドル安を招来

筆者による2008年以降のドルと実質金利の検証によれば、ドルのトレードウエイトインデックス(米連邦準備制度公表のBroadベース)の動向は、3カ月物財米財務省証券金利を上述の10年物国債と物価連動債利回りから算出した期待インフレ率によって実質化した実質短期金利と最も連動性が高いことが分かった(図表)。

これによれば、現在、実質短期金利はマイナス2.0%近辺まで低下しており、ドルインデックスは、19%程度過大評価されていることになる。換言するなら、実質短期金利の観点からは、ドルの下落余地はいぜん大きいと考えられる。筆者は、従来からのドル円相場が年末までに90円までが下落するという予想を保持する。

【図表】米実質短期金利とドルインデックスの推移

【図表】米実質短期金利とドルインデックスの推移
(資料)米連邦準備制度
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